LAMの術後再発にシロリムスの効果

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当院外科からの報告です。シロリムスがLAMのSPC術後再発を減らすという過去にない稀有な報告です。





  • 概要
■リンパ脈管筋腫症(LAM)の患者は頻繁に気胸を起こす。シロリムスはLAMの標準的な治療法であるが、その気胸に対する効果については議論の余地がある。

■近年、LAM患者の気胸に対する外科的治療法として、total pleural covering(TPC)およびmodified TPC(mTPC)が導入された。しかし、これらの治療を受けた患者の気胸の再発に対するシロリムスの効果はまだ不明である。我々は、シロリムス治療を含むいくつかの臨床的要因が、術後気胸の再発を予測するのではないかという仮説を立てた。

■この仮説を明らかにするため、2005年1月から2019年1月の間に、外科データベースから気胸に対してTPC17例、mTPC7例、の合計24件の外科的全肺胸膜被覆術(SPC)を受けた連続LAM患者18例の臨床データを後ろ向きに解析し、術後再発の予測因子を明らかにした。

■SPCの手術24例のうち、14例(58.3%)は同側気胸が2回以上あり、11例(45.8%)はSPC前に同側胸膜処置の既往があった。12人の患者において16件の手術(66.6%)がおこなわれ、SPC後にシロリムス治療を受けた(シロリムス群)。SPC後の追跡期間(中央値)は69.0ヶ月で、3人の患者における4回の手術(16.6%)で術後再発が確認され、SPC後の5年無再発生存率(RFS)は82.9%だった。術後再発の患者では、血清VEGF-D値が非再発患者より有意に高く(3260.5 vs 892.7pg/mL、p=0.02)、再発群のシロリムス投与率は非再発群よりも有意に低かった(0% vs 80%、p=0.006)。log-rank検定では、シロリムス群(SPC後のシロリムス使用)のRFSは非シロリムス群よりも有意に良好であり(p=0.001)、その他の要因で有意差はなかった。


by otowelt | 2021-12-22 00:08 | びまん性肺疾患

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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