慢性咳嗽に対する制酸剤治療の効果予測


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慢性咳嗽診療において、(Fスケール)問診票(FSSG)がよく用いられますが、感度・特異度についてはみなさんご存知の通り、ベストオブベストではないため、「胸焼け」にどのくらい自分の診療力をあずけられるか・・・といったところになります。

慢性咳嗽全体に占める割合は、国や研究グループによって異なりますが、肥満人口が多い国ほど多い印象です。日本では、たとえば名古屋市立大学のKanemitsuらは慢性咳嗽のうち45.8%と高い数値を報告していますが(Allergol Int. 2019 Oct;68(4):478-485.)、そこまで高次医療機関でない私にとっては「こらGERDやで!」と思うのは、10%くらいの印象です。

PPIは慢性咳嗽の治療でいったんトライされることが多いですが、「むっちゃ効いた!」という例は、論文ほど多くはないかなと感じています。何より、プラセボ効果が入りやすい構造になっているので注意が必要です。日本のガイドラインでは、3ヶ月のPPI治療が推奨されています。PPIのみで改善しない場合、消化管運動機能改善薬の追加をおこなうこともありますが、エビデンスは多くありません。Kanemitsuらは、機能性ディスペプシア症状が酸逆流症状よりも強いケースでは、PPIと消化管運動機能改善薬の併用によって咳の改善が大きかったと報告しています(Allergol Int. 2019 Oct;68(4):478-485.)。



  • 概要
■胃食道逆流症(GERD)は一般的に慢性咳嗽に重要な役割を果たしていると考えられており、患者はしばしば経験的に制酸剤治療を受けている。われわれは、2つの咳嗽専門クリニックに通院している胸焼けのある患者とない患者の同治療への反応率を調査した。

■連続した558人の患者の後ろ向きレビューを行った(アメリカおよびイギリスの2クリニック合算)。制酸剤治療を受けた患者を対象とし、二項ロジスティック回帰を用いて、慢性咳嗽に対する制酸剤の反応を予測する上での胸焼けの意義を確認した。

■558人の紹介患者のうち、238人の患者がデータ欠損または咳の継続期間が8週間未満であったため除外された。残りの320人の患者は、女性がほとんどで(76%)、平均年齢は61±13歳だった。96.8%が非喫煙者で、慢性咳嗽を36(18-117)ヶ月間有していた。

■胸焼けがある72人の患者のうち、20人(28%)に制酸剤治療による咳の改善がみられたが、胸焼けがない248人の患者では35人(14%)にとどまった。以上から、胸焼けを訴える患者は、制酸剤治療に反応する割合が2.7倍(95%信頼区間1.3-5.6)高かった(p = 0.007)。






by otowelt | 2022-01-02 00:40 | 呼吸器その他

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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