難治性慢性咳嗽に対する選択的P2X3受容体拮抗薬シボピキサント

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いつになったら承認されるのかなとP2X3受容体拮抗薬の登場を心待ちにして幾星霜。ついに二部会に!!!

「■リフヌア錠45mg(ゲーファピキサントクエン酸塩、MSD):「慢性咳嗽」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。選択的P2X3受容体拮抗薬。P2X3受容体は気道の迷走神経のC線維上に発現しているアデノシン三リン酸(ATP)受容体で、ATPは気道の炎症条件下で気道粘膜細胞から放出される。細胞外ATPが気道のC線維上のP2X3受容体と結合することで、損傷の可能性を示すシグナルとして感知され、咳嗽が惹起されることがある。細胞外ATPとP2X3受容体の結合を阻害することで、C線維の活性化を抑え、咳嗽が抑制されると考えられている。承認後は、杏林製薬が独占販売する。

ゲーファピキサントおよび同薬より選択的P2X3受容体拮抗薬であるエリアピキサント(BAY 1817080)については過去ブログで紹介しました。選択性が高いほど味覚障害が軽度かなという印象です。


咳の権威Morice先生に続いて、日本の咳の権威新実先生のERJの論文を読ませていただきました。この流れはちょっと胸アツです。


Niimi A, et al. Randomised trial of the P2X3 receptor antagonist sivopixant for refractory chronic cough. Eur Respir J . 2021 Oct 14;2100725.

  • 概要
■P2X3受容体は、咳反射に大きく関与していることが示されている。また、ヘテロ三量体受容体(P2X2/3)は、味覚障害に関与しているとされている。最新のアンタゴニスト候補であるゲーファピキサントは、P2X3受容体に対する選択性が低く味覚障害を引き起こすが、新たに開発されたシボピキサントは、P2X3とP2X2/3に対する選択性が高い。

■第2a相ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー多施設共同試験において、難治性または原因不明の慢性咳嗽を有する成人患者を対象に、シボピキサント150mgまたはプラセボを1日1回2週間経口投与した後、2~3週間のウォッシュアウト期間を経て、プラセボまたはシボピキサントを2週間クロスオーバー投与した。シボピキサントの有効性と安全性を評価した。

■ランダム化された31人の患者のうち、シボピキサント先行群15人、プラセボ先行群15人が試験を完遂した。2週間の投与後、日中の1時間あたりの平均咳嗽回数のベースライン比(主要評価項目)および24時間あたりの比(副次評価項目)は、プラセボ調整後でそれぞれ-31.6%(p=0.0546)および-30.9%(p=0.0386)だった。また、シボピキサントは健康関連QOL も改善した。治療関連の有害事象は、シボピキサント投与中に12.9%、プラセボ投与中に3.2%の患者に発生した。軽度の味覚障害は、シボピキサント投与中2人(6.5%)の患者に発生した。


by otowelt | 2021-11-27 00:01 | 呼吸器その他

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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