肺MAC症におけるエタンブトール→フルオロキノロンスイッチは悪手


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肺MAC症におけるエタンブトールの重要性については、日本では森本先生が広く啓蒙してくださっているように思います。

クラリスロマイシン耐性例の解析では、同薬耐性のリスクとして標準治療中のエタンブトール中止が多く(Ann Am Thorac Soc. 2016 Nov;13(11):1904-11.)、日本では6割以上の肺MAC症が初期治療を12ヶ月以上クリアできていないと報告されています(Respir Med. 2019 Oct-Nov; 158:67-9.)。




  • 概要
■肺Mycobacterium avium complex(MAC)症の治療において、エタンブトールあるいはリファンピシンは有害事象のためにしばしば中止される。本研究では肺MAC症治療において、エタンブトールまたはリファンピシンからフルオロキノロン系抗菌薬にスイッチした場合の治療成績をみた研究。放射線学的な病型ごとに検討した。

■2006~2019年にかけて、韓国の3次紹介施設で標準治療を開始し、治療期間が1年以上の患者を後ろ向きに同定した。空洞型(線維空洞型、空洞・結節気管支拡張型)178人と非空洞・結節気管支拡張型256人を対象とした。

■初期レジメンを維持した患者と、エタンブトールまたはリファンピンをフルオロキノロン系抗菌薬(モキシフロキサシンまたはレボフロキサシン)に変更した患者の間で、1年後の微生物学的治癒を比較した。

■空洞を有する患者178人における微生物学的治癒は71.3%であった。このうち、エタンブトールからフルオロキノロンに変更した16人の微生物学的治癒は、アミノグリコシド併用で3剤療法を維持した156人よりも有意に低かった(37.5% vs 74.4%,P = 0.007)。リファンピンの代替としてフルオロキノロンを投与された6人の患者のアウトカムは、初期レジメンを継続した患者の転帰と同等だった。非空洞・結節気管支拡張型の患者において、3剤併用内服を行った場合の微生物学的治癒は、初期治療法を継続しても、エタンブトールまたはリファンピンをフルオロキノロン系にスイッチした場合でも同等だった。

by otowelt | 2021-12-25 00:18 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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