実はこのテーマ、国によって固定方法にはかなり差異があります。バルーンという安全装置があれば抜けることはないと思いますが、アンカースーチャーがないと中に押し込まれるリスクはあるわけなので、寝返りのときに胸腔ドレーンがさらに10cm入りましたーなんてことがなければよいのですが・・・。
Mercer RM, et al. A randomised controlled trial of intrapleural balloon intercostal chest drains to prevent drain displacement. European Respiratory Journal 2021; DOI: 10.1183/13993003.01753-2021
- 概要
■胸腔ドレーンの誤抜去は臨床上よくある問題で、9~42%の症例で発生し、治療失敗や不必要なリスクを伴う追加処置につながる。胸腔内バルーンを内蔵した新しい胸腔ドレーンは、位置ずれのリスクを低減することができる。
■バルーン付き胸腔ドレーンとバルーンなし胸腔ドレーン(12Fr)に関して、胸腔ドレーンの偏位を主要アウトカムとして比較して前向きランダム化比較試験をおこなった。
■267人の患者がランダム化された(主要アウトカムのデータが得られたのは257人:96.2%)。バルーン付き胸腔ドレーンを使用した場合、偏位の発生頻度は低かったが(5人/128人、3.9% vs 13人/129人、10.1%)、統計的に有意ではなかった(オッズ比0.36, 95%信頼区間0.13-1.0, p=0.09)。ドレーン縫合の有無などを考慮して調整すると、バルーンの存在は胸腔ドレーン脱落率の低下と独立して関連していた(調整後オッズ比0.27, 95%信頼区間0.08-0.87, p=0.028)。有害事象はバルーン群で標準治療群より高かった(59人/131人, 45.0% vs 18人/132人, 13.6%;p<0.0001)。