小児におけるIGRA

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■IGRAとツベルクリン反応
小児の結核診断法として、過去ツベルクリン反応(ツ反)を優先していました。しかし、現在までの知見により、QFT-3G(GIT)・Plus・T-SPOTはQFT-2Gと比較して感度が高く、小児LTBIに対する感度が成人結核患者を対象とした場合と同等であること、BCG既接種の乳幼児におけるIGRAよりツ反を優先する意義が乏しいことから、IGRAを小児の接触者健診の基本項目として位置づけています。

とりわけ乳幼児においては細胞性免疫が成熟していないことから、IGRAの感度不良が問題になることがあります。そのため現在もツ反を併用することが推奨されていますが、乳児期のBCGワクチン接種の存在から、ツ反結果に基づく結核感染診断にしばしば難渋します。

ゆえに、現行、0-5歳におけるBCG既接種児・小学生に関しては、原則として、IGRAとツ反を併用実施します。単純に言えば、二重の網で感度を上げようということです。IGRAで陽性が判明している場合、あるいはツ反で水疱・壊死を認めた場合には、もう一方の検査を省略することも可能です。
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. 0〜5歳のBCG既接種児および小学生におけるLTBI(小児結核診療のてびき(改訂版)より引用)


■小児におけるIGRA判定不可の頻度
気になるのは、「Mitogen刺激に対してどのくらい判定不可になるのか」ということです。抗酸菌診療医にとっては釈迦に説法ですが、Mitogenというのは陽性コントロールをみる検査でQFTではフィトヘマグルチニン-P(PHA)という物質が用いられます。

さて、小児におけるIFN-γ産生をみた前々世代QFT-2Gの研究によると、0歳児では6歳以上と比べてIFN-γ産生量が少なく、0歳で約30%、1歳で約10%が判定不可になるとされていました1)

QFT-3GとT-SPOTと両方をみた研究において、5歳未満ではやはり判定不可が他の年齢層より多めではあるものの、容認できる頻度であることが示されています ()2)。リンパ球の問題における判定不可というのは、理論上はT-SPOTのほうがリンパ球調整プロセスがあり有利とされていますが、基本的にQFTと差はないようです(3)

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. 判定不可の頻度(文献2より引用)/図. 小児におけるQFT vs T-SPOT(文献3より引用)


QFT-Plusについては、QFT-3Gと直接比較した結果においても、基本的に差はないとされています4)

アメリカにおいても、ツ反陽性・IGRA陰性で未治療となった乳幼児から結核の発症がないという理由でもって、最近はIGRAを積極的に参考にする流れになっています5)

乳幼児において判定不可の頻度は有意に多いのですが、年齢を理由にIGRAの適用を躊躇する必要はありません。発病例を対象とした場合に、十分感度は良好であるため、見逃しを減らすためにはやらないよりやったほうがよいです。そのため、「陰性だから結核ではない」と安易に判断しないことも大事です。


(参考文献)
1) 徳永修, 他. 小児活動性結核症例におけるクォンティフェロンTB-2Gの反応性の検討. 日本小児呼吸器疾患学会雑誌.2008;19:112-121.
2)Mandalakas AM, et al. Interferon-gamma release assays and childhood tuberculosis:systematic review and meta-analysis. Int J Tuberc Lung Dis. 2011;15:1018-1032
3) Meier NR, et al. Risk Factors for Indeterminate Interferon-Gamma Release Assay for the Diagnosis of Tuberculosis in Children-A Systematic Review and Meta-Analysis. Front Pediatr. 2019 May 29;7:208.
4) Kay AW, et al. Evaluation of the QuantiFERON-Tuberculosis Gold Plus Assay in Children with Tuberculosis Disease or Following Household Exposure to Tuberculosis. Am J Trop Med Hyg. 2019 Mar;100(3):540-543.
5) American Academy of Pediatrics. Red Book: 2021-2024 Report of the Committee on Infectious Diseases, 32 ed, Kimberlin DW, Barnett ED, Lynfield R, Sawyer MH (Eds), American Academy of Pediatrics, Itasca, IL 2021.


by otowelt | 2022-01-25 00:12 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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