monoMAC症候群

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■monoMACとは
抗酸菌診療医が必ず一度は勉強する疾患に「monoMAC症候群(monocytopenia and Mycobacterium avium complex infections syndrome)」があります。GATA2欠損症による、抗酸菌の易感染性による病態です。好発年齢は思春期~20代であり、極めて重篤な状態で来院される、抗酸菌症の準エマージェンシーです。

■GATA2とは
GATA2は造血系細胞の発生に重要な役割を果たしている転写因子です(1)。GATA2は3番染色体長腕に存在し、GATA2欠損症はde novoあるいは常染色体優性遺伝のヘテロ異常で起こり、単球をはじめとした血球減少が起こり造血器疾患を併発します(GATA2タンパクの変異はN末端からN末端側zinc fingerにかけてのフレームシフト変異とC末端側zinc finger [DNAのGATA配列を認識して結合する重要なドメイン]のミスセンス変異や欠失が主)。

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. GATA2遺伝子(文献1より引用)


monoMAC家系では、GATA配列に隣接するE-boxを含んだ領域の欠失があるため、SCF・E2A・LDB1・LMO2との複合体が機能できなくなっているようです。

GATA2は血球だけでなく血管内皮においても重要とされており、欠失マウスでは皮下出血や浮腫もみられます。典型的には骨髄異形成症候群(MDS)や急性骨髄性白血病(AML)が徐々に進行していくわけですが、初発症状が重度の感染症を起こし、シビアな非結核性抗酸菌症を有するmonoMAC症候群になります。

■monoMACの臨床像
monoMACの臨床像をにまとめます。monoMACにおける最大のケースシリーズでは、単球の平均は13/mm3、B細胞の平均は9/mm3で、NK細胞の平均は16/mm3と正常から10分の1まで低下することが報告されています2)。monoMACでは組織マクロファージや表皮Langerhans細胞は保たれており、B細胞リンパ球減少があるものの血清免疫グロブリン値は正常範囲にあります。

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. monoMACの臨床像

結節性紅斑と肺胞蛋白症は、最大でmonoMACの3分の1程度に認められますが、GATA2変異が証明されていない肺胞蛋白症において、いずれにしても日和見真菌感染症や抗酸菌感染症のリスクが高いことから一元的な理由でない可能性も念頭に入れておくべきです3)


■monoMACの治療と予後
重症感染症を併発していても、基本的に同種造血幹細胞移植(allogeneic stem cell transplantation: allo SCT)が治療法となります。GATA2の異常があるmonoMACにおけるallo SCTの適切な時期は明確ではありませんが、芽球の増加が顕著になる前に考慮されるべきです。GM-CSFなどを使用して単球減少を改善させる意義や、MACに対する抗菌薬予防・HPVワクチン接種などの効果については不明です。

予後については、症例数が少なく何とも言えませんが、おおむね致死率は28~48%と高く、感染症をいかにコントールするかがカギとなるようです2)


(参考文献)
1) Hsu AP, et al. Mutations in GATA2 are associated with the autosomal dominant and sporadic monocytopenia and mycobacterial infection (MonoMAC) syndrome. Blood. 2011 Sep 8;118(10):2653-5.
2) Vinh DC, et al. Autosomal dominant and sporadic monocytopenia with susceptibility to mycobacteria, fungi, papillomaviruses, and myelodysplasia. Blood 2010; 115:1519–29.
3) Punatar AD, et al. Opportunistic infections in patients with pulmonary alveolar proteinosis. J Infect 2012; 65:173–9.


by otowelt | 2022-01-09 00:02 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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