Johne病(Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis)

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■Johne病とは
Mycobacterium avium complexはヒトの抗酸菌症の中で最も多い原因菌ですが、subspeciesにparatuberculosis(パラ結核)という菌がいます(Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis)。これは、ウシ、シカ、ヒツジ、ヤギ、バッファローなどの反芻動物にJohne病を起こす細菌で、慢性経過を示し、長い経過ののち死に至ることがある病です。


■Johne病の症状
Johne病の主症状は重篤な下痢であり、数週間の経過で体重減少がみられます。早期発見が難しく、ある程度の病状になってからJohne病と判明するのが一般的です。数年の経過で、無排菌期、低度排菌期、高度排菌期へと遷移します。無排菌期での発見はかなり困難です。

下痢便から菌が散布され、畜舎や乳を介して感染が広がるリスクがあります。経口感染が通常で、胎盤感染や哺乳感染はそこまで多くないのではと言われています。感染牛が分娩した子牛の菌感染ハザード比は非感染牛の子牛に対して1.26倍とされていますが有意差は確認されていません1)

菌は経口的に取り込まれ、まず腸粘膜に感染することが知られています2)。若い反芻動物ほど感染感受性が高く、たとえばウシの場合は6ヶ月未満で75%、6~12ヶ月で50%、12ヶ月以上で20%とかなり罹患率に差があります3)


■Johne病の診断
糞便培養か糞便のリアルタイムPCR(qPCR)にて診断されます。糞便を抗酸菌染色すると抗酸菌の集塊が確認されますが、これを分離培養をおこなうことで菌種の同定も可能です。剖検による腸間膜リンパ節をマイコバクチン添加Herrold培地で培養してもよいですが、コロニー形成には2ヶ月以上を要する遅発育菌です。また、無排菌期の牛を同定できず、感度は38%と低いです2)


■Johne病の予後
高度排菌期になると1年以内にほぼ死亡にいたります。極めて予後不良の感染症と言えます。畜検査で発見された場合、全部廃棄措置がおこなわれ、届出が必要となっています。そのため、治療の検討の余地はほぼないと考えてよいでしょう。

感染牛の最終摘発・廃棄措置後1年間は年3回、その後2年間に1回の計5回、6ヶ月齢以上を対象として定期検査と血清ELISAと糞便qPCR・培養が行われます。


■ヒトとの関連性
Crohn病4)や多発性硬化症5)との関連性が指摘されています。Crohn病の腸組織にMycobacterium avium subsp. paratuberculosis DNAが存在することや、Mycobacterium avium subsp. paratuberculosisに対する抗体(IgG抗体、IgE抗体)を持つ人がいることがわかっており、この菌に対する抗原提示が発症と関連しているのではないかという説があります。


(参考文献)
1) Eisenberg SW, et al. Dam Mycobacterium avium subspecies paratuberculosis (MAP) infection status does not predetermine calves for future shedding when raised in a contaminated environment: a cohort study. Vet Res. 2015 Jun 19;46(1):70.
2) Sweeney RW, et al. Tissue predilection sites and effect of dose on Mycobacterium avium subs. paratuberculosis organism recovery in a short-term bovine experimental oral infection model. Res Vet Sci. 2006 Jun;80(3):253-9.
3) Windsor PA, et al. Evidence for age susceptibility of cattle to Johne's disease. Vet J. 2010 Apr;184(1):37-44.
4) Proietti E, et al. Mycobacterium Avium Subspecies Paratuberculosis Infection and Biological Treatment of IBD: Cause or Consequence? J Crohns Colitis. 2021 Aug 2;15(8):1247-1249.
5) Hayashi F, et al. Elevated mycobacterium avium subsp. paratuberculosis (MAP) antibody titer in Japanese multiple sclerosis. J Neuroimmunol . 2021 Nov 15;360:577701.



by otowelt | 2022-02-04 00:06 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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