肝性脳症治療薬リファキシミンは結核に効いてしまうのか?

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肝性脳症の治療薬であるリファマイシン系抗菌薬リファキシミン(リフキシマ®)は、肝硬変診療ガイドラインにおいても最も高い推奨度とエビデンスレベルを有する薬剤で、この4~5年よく処方されるようになりました。

リファンピシンと同じリファマイシン系の抗菌薬であり、抗酸菌診療医も知っておく必要があります。 リファキシミンの特徴は、リファンピシンとは異なり腸管吸収率が0.4%と低く、非吸収性合成二糖類と同程度の有効性と安全性があるという点です1)。腸間膜静脈の血中アンモニア濃度を低下させ、昏睡の発現を抑制することが可能です。そのため、腸管非吸収性抗菌薬が肝性脳症の基本的治療として推奨されているわけです。

MICとMBCについてはあまり報告がありませんが、Staphylococcus epidermidisにおいてリファキシミン、リファンピシン、リファペンチンを比較した報告があります2)。リファキシミンのMIC、MBCは0.012、0.025で(MBC/MIC: 2)、リファンピシン、リファペンチンのMBC/MICと同程度です。リファキシミンも基本的には他のリファマイシンと同じように殺菌的に作用すると考えてよいです。抗菌スペクトラムも、リファンピシン同様広く効いてしまいます。

薬剤耐性機構については、Bifidobacterium infantis Bi-07を用いて、抗菌薬との結合にcodon 513でコードされるアミノ酸が影響する可能性が指摘されています(同ミスセンス突然変異)。rpo Bはリファンピシンでもよく知られた耐性機序であり、リファキシミン耐性が他のリファマイシンと交差耐性を示すと考えられます。リフキシマ®の添付文書では「本剤は抗酸菌に対しても抗菌活性を示し、他のリファマイシン系抗菌薬と交差耐性を示す可能性がある。他のリファマイシン系抗菌薬に対する結核菌の耐性化を防ぐため、肺結核及びその他の結核症を合併している肝性脳症患者における高アンモニア血症に対しては、他の治療法を選択すること。」と記載されています。

in vivoで、リファキシミン投与後における結核菌のリファマイシン感受性低下は認められておらず、また長期にリファキシミンを使用するわけではありません。結核診療に多大なる影響を与えることはなさそうではありますが、現状、結核と分かっている患者さんにおいてリフキシマ®は投与しないほうがよさそうです。

作用機序としては腸結核にも効きそうな気がしましたが、肺外結核は基本的に全身の結核を治療する意義があるので、やはり他のリファマイシンのほうがよいのでしょう。


(参考文献)
1) Suzuki K, et al. Efficacy and safety of rifaximin in Japanese patients with hepatic encephalopathy: A phase II/III, multicenter, randomized, evaluator-blinded, active-controlled trial and a phase III, multicenter, open trial. Hepatol Res . 2018 May;48(6):411-423.
2) Villain-Guillot P, et al. In vitro activities of different inhibitors of bacterial transcription against Staphylococcus epidermidis biofilm. Antimicrob Agents Chemother. 2007 Sep;51(9):3117-21.



by otowelt | 2022-02-07 00:18 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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