COPDに対するトリプル吸入療法は本当に死亡率まで減少させるのか?


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ICSが死亡まで動かすほどのパワーを持っていないというのは、これまで指摘されていたことです。そのため、何のアウトカムをもってICSを使うのかという課題はあります。少なくとも好酸球数が多い患者ではICS併用は妥当と思われますが、過去の増悪が多いからといってICSが推奨されるのかどうかはこれからもっと議論されるべきと思われます。


Miravitlles M, et al. A Pooled Analysis of Mortality in Patients with COPD Receiving Dual Bronchodilation with and without Additional Inhaled Corticosteroid. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis . 2022 Mar 11;17:545-558.

  • 概要
■近年の研究では、COPD増悪歴のある患者においてLAMA/LABA/ICSによる死亡率のほうが、LAMA/LABAよりも低かったと報告されている。軽症~超重症COPDで、増悪リスクが低い患者において、LAMA/LABAとLAMA/LABA/ICSの死亡までの期間を比較検討した。

■6つのランダム化比較試験(TONADO 1/2、DYNAGITO、WISDOM、UPLIFT、TIOSPIR:LAMA/LABA:n=3156、LAMA/LABA/ICS:n=11891)からデータを抽出した。解析はon treatmentでおこなわれ、52週で打ち切られた。LAMA/LABA/ICS投与群は、試験開始前にICSを投与されており、ランダム化時にICSを中止していない。共変量は、年齢、性別、地域、喫煙歴、気管支拡張後予測1秒量、前年のCOPD増悪歴、肥満度、診断からの経過時間などだった。全死亡までの期間は、Cox比例ハザード回帰モデルを用いて評価された。
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.死亡率(文献より引用)

■傾向スコアマッチ後、LAMA/LABA患者3133人、LAMA/LABA/ICS患者3133人が解析に組み込まれた。前年に2回以上のCOPD増悪を報告した患者は20%未満だった(LAMA/LABA:19.1%、LAMA/LABA/ICS:19.0%)。LAMA/LABA群では41人(1.3%)、LAMA/LABA/ICS群では45人(1.4%)の死亡が確認された。死亡までの期間に治療群間の統計的有意差は確認されなかった(LAMA/LABAのハザード比1.06、95%信頼区間0.68-1.64、P=0.806)。異なる共変量を用いた感度解析やITT集団での感度解析も同様の結果であった。







by otowelt | 2022-04-13 00:15 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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