■4剤の群雄割拠
現在オキサゾリジノン系抗菌薬には、リネゾリド(ザイボックス®)とテジゾリド(シベクトロ®)の2剤が発売されています。未承認ですが、国際的にはステゾリド、デルパゾリドという2剤があり、合計4剤が今後使われていく可能性があります。
シベクトロ®が発売されて3年近くが経ちますが、私は、実はまだこれを処方したことがない感染症専門医です。キュビシン®もそうですが、呼吸器内科領域ではまず使わないのです。
テジゾリドは、リネゾリドと同じくリボソームの50Sサブユニットに結合して70S開始複合体の形成を阻害することで、細菌のタンパク合成を阻害する抗MRSA薬です。ご存知の通り、これらは抗酸菌に対しても有効です。多剤耐性結核に対して、国内でもリネゾリドが使用されています。
■抗酸菌症へのオキサゾリジノン
抗酸菌症に対するオキサゾリジノン系抗菌薬は投与期間が長くなります。残念ながら、リネゾリドは血球減少などの副作用から長期投与が難しいです。600mg/dayから300mg/dayに減量することも選択肢になりますが、多剤耐性結核においても、中途脱落が多い状況です。何より、外来に37条の2で移行したときの薬価がリバーブローのように効きます。
テジゾリドはリネゾリドよりも半減期が長く、1日1回の投与が可能です。服薬アドヒアランスの観点からも、長期治療に有望な製剤と言えます。ステゾリドはリネゾリドのような骨髄抑制やQT延長の頻度が低いものの、神経毒性や肝障害の懸念が残ります1)。デルパゾリドはまだ臨床試験が進んでおらず、今後の検討を待つ必要があります。
遅発育菌(SGM)に対するオキサゾリジノン系抗菌薬のMICをみた研究2)によると、M. avium complex、M. kansasiiの大部分に良好なin vitro活性を示すことが分かっています。MACに対してはステゾリド、M. kansasiiについてはすべてのオキサゾリジノン系抗菌薬の感受性が高いという結果が示されています。
別の研究3)では、迅速発育菌(RGM)に関して、M. abscessusに対してはテジゾリドが最も高い感受性を、M. fortuitumに対してはデルパゾリドが最も高い感受性を示しました。
注目は、今後抗酸菌症におけるテジゾリド・ステゾリド・デルパゾリドのエビデンスがさらに蓄積されて、リネゾリドから患者大移動が起こるかどうかです。
(参考文献)
1) Wallis RS, et al. Biomarker-assisted dose selection for safety and efficacy in early development of PNU-100480 for tuberculosis. Antimicrob Agents Chemother. 2011 Feb;55(2):567-74.
2) Yu X, et al. In vitro Antimicrobial Activity Comparison of Linezolid, Tedizolid, Sutezolid and Delpazolid Against Slowly Growing Mycobacteria Isolated in Beijing, China. Infect Drug Resist . 2021 Nov 9;14:4689-4697. 3) Wen S, et al. Comparison of the in vitro activity of linezolid, tedizolid, sutezolid, and delpazolid against rapidly growing mycobacteria isolated in Beijing, China. Int J Infect Dis. 2021 Aug;109:253-260.