軽度高炭酸ガス血症のあるCOPD増悪に対するHFNCと通常酸素療法の比較
2022年 05月 17日
COPD増悪時に、NPPVを開始しなければ厳しいなという場合は鎮静をかけてでもNPPVを適用しなければいけませんが、軽度の増悪時にはHFNCの使用を行うこともあります。
pH7.25~7.35、PaCO2>45mmHgのCOPD増悪については、79人をランダム化比較したイタリアの研究で、HFNCはNPPVと比較して6時間後PaCO2低下の非劣性が示されています(図1, Crit Care. 2020 Dec 14;24(1):692.)。
では、pH7.35以上になるとどうでしょうか。上記同様、PaCO2>45mmHgのCOPD増悪に対するHFNCと通常酸素療法を比較すると、入院中の治療失敗はHFNCの方が優れていたという報告があります(Int J Chron Obstruct Pulmon Dis . 2020 Nov 24;15:3051-3061.)。
中日友好医院をはじめとした北京のグループから、この領域に関する新たなエビデンスが発表されています。
Xia J, et al. High-flow nasal cannula versus conventional oxygen therapy in acute COPD exacerbation with mild hypercapnia: a multicenter randomized controlled trial. Crit Care. 2022 Apr 15;26(1):109.
- 概要
■高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)は、COPD急性増悪患者の換気を改善することができる。しかし、臨床的なアウトカムへの影響はまだ不明である。
■ランダム化比較試験は、2017年7月から2020年12月まで中国の三次病院16施設で実施された。軽度の高炭酸ガス血症(pH≧7.35、PaCO2>45mmHg)を伴うCOPD増悪患者を、HFNCまたは通常酸素療法にランダムに割り付けた。
■主要アウトカムは、入院中に挿管基準を満たした患者の割合とした。副次的アウトカムは、治療失敗(忍容性なし、非侵襲性または侵襲性換気の必要性)、入院期間、医療費、死亡率、90日時点の再入院などとした。
■ランダム化された患者337例(年齢中央値70.0歳、男性280例[83.1%]、pH中央値7.399、動脈血酸素分圧中央値51mmHg)中、330例が試験を完遂した。HFNCの患者4人/158人、通常酸素療法の患者1人/172人が挿管基準を満たした(P=0.198)。NPPVに進行した患者は両群で同等だった(HFNC群15人[9.5%]vs 通常酸素療法群22人[12.8%]、P=0.343)。通常酸素療法と比較して、HFNCでは入院期間中央値が有意に長く(9.0[IQR7.0~13.0]日 vs. 8.0[IQR7.0~11.0]日)、入院医療費の中央値が高く(約2298ドル[IQR1613~3782ドル] vs. 2005ドル[IQR1439~2968ドル])なっていることが明らかにされた。その他の副次的アウトカムには群間差はなかった。
■この多施設共同ランダム化比較試験では、HFNCは通常酸素療法と比較して、軽度の高炭酸ガス血症を伴うCOPD増悪患者における挿管の必要性を減少させるにはいたらなかった。
by otowelt
| 2022-05-17 00:46
| 気管支喘息・COPD