肺結核の診断は「3連痰」を検査するより、どこかに胃液検査を入れよう
2022年 05月 06日
実はずっと前から「スゴイなぁ」と思っており、あまり声を大にして言うと本人に迷惑かと思って控えていたのですが、慢性過敏性肺炎のガイドラインにも出てくるくらいになったので、もういいでしょう。筆頭著者として論文を書いている国内医師ランキング第1位ではないか、というくらい論文を連発している複十字病院下田真史先生の論文を紹介したいと思います。
私は呼吸器系の雑誌の論文はたぶん全部読んでいるのですが、加湿器肺などの過敏性肺炎の論文で「Shimoda M」を見かけることが増え、おや?と思ったのがきっかけです。「中二病」の論文も書いていて、もしかして中二病の権威になるかもしれません。
執筆される論文の振れ幅がハンパないですが、胃液検査のこの論文は、本当にビビりました。これまでちゃんと検討されてこなかったことなのに、誰も検討しなかったというブラックボックス。よく調べようと思ったなあ、と感心します。日本内科学会総会で優秀演題賞を受賞されたそうです。
- 概要
■胃液は塗抹陰性肺結核患者や喀痰が出ない患者において、肺結核の診断に有用とされている。胃液塗抹は感度が低く、以前の報告では胃液の分析のみで診断された患者はいないことが示されている。しかし、喀痰検査が陰性でも胃液陽性の結核患者もおり、発生率は不明である。そこで本研究は、肺結核の診断における胃液の有用性を検討した。
■胃液検査の診断精度を解析するため、2016年1月から2021年3月までに複十字病院で胃液検査を受けた肺結核患者203例および非結核性抗酸菌症患者93例を含む、喀痰塗抹陰性または喀痰のない513例のデータを後ろ向きに収集した。
■肺結核の診断における胃液の塗抹陽性は感度21.2%、特異度91.9%、核酸増幅検査陽性は感度55.8%、特異度99.6%、培養陽性は感度71.4%、特異度100%だった。胃液のみで診断された患者は23人(11.2%)だった。
■1回目の喀痰検査では58.5%の診断率、この次に胃液検査を行うと診断率は83%に上昇し、喀痰2回を繰り返した場合の診断率75.5%よりも有意に高い診断率であった。また、同様に3回のストラテジーでは、抗酸菌検査の中に胃液を含めることで診断率が87.4%に上昇し、3連痰診断率79.2%よりも高かった。
by otowelt
| 2022-05-06 00:31
| 抗酸菌感染症