Macklin効果は高い精度で縦隔気腫・気胸を予測する


Macklin効果は高い精度で縦隔気腫・気胸を予測する_e0156318_23522076.jpg
コロナ禍において、Macklin効果にまさかスポットがあたるとは誰も思っていなかったでしょうから、こういう古典的なサインについては逐一見直したいところですね(Arch Intern Med. 1939; 64: 913– 26.)。肺胞内圧が上昇すると、肺胞が破裂して気胸になることがありますが、当該空気が血管鞘を剥離しながら肺門部に達するという現象が起こることがあり、これをMacklin効果と呼びます。

Macklin効果は高い精度で縦隔気腫・気胸を予測する_e0156318_23403114.png
鑑別方法は、上下のスライスを見て、「気道と連続性・交通があるもの」を気管支、「気管支のそばにあるだけでどことも交通が見られないもの」をMacklin効果と判断します。

今回より前の報告では、Macklin効果がその後の縦隔気腫・気胸を予測する感度は89.2%(95%信頼区間74.6-96.9%)、特異度95.6%(95%信頼区間90.6-98.4%)、陽性的中率84.5%(95%信頼区間71.3-91.2%)、陰性的中率97.1%(95%信頼区間74.6-96.9%)と報告されています(J Crit Care. 2021 Aug 11;66:14-9.)。


Paternoster G, et al. Macklin effect on baseline chest CT scan accurately predicts barotrauma in COVID-19 patients. Respir Med. 2022 Apr 20;197:106853.

  • 概要
■COVID-19患者において、胸部CT画像のMacklin効果がその後の縦隔気腫・気胸の発生を予測する役割を検証する。

■本調査は観察症例対照研究である。研究期間中(2020年10月1日~2021年4月31日)に入院時に胸部CT検査を受けたCOVID-19患者を連続的に同定した。barotraumの予測に対するMacklin効果の精度を感度・特異度・陽性的中率・陰性的中率の観点から推定した。

■研究期間中に病院到着時に胸部CT撮影を受けたCOVID-19患者は981人で、698人が間質性肺炎の放射線学的特徴を有していた。このうち、入院中にbarotraumaを発症した32例すべてを含む33例(4.7%)にMacklin効果がみられた(真陽性率96.9%)。Macklin効果を認めた1例/33例はbarotraumaを発症しなかった(偽陽性率3.1%)。ベースラインの胸部CT検査でMacklin効果がなかった患者には、barotraumaのイベントは記録されていない。Macklin効果は、縦隔気腫・気胸の予測において感度100%(95%信頼区間89.1-100)、特異度99.85%(95%信頼区間99.2-100)、陽性的中率96.7%(95%信頼区間80.8-99.5)、陰性的中率100%、精度99.8%(95%信頼区間99.2-100)であった。barotraumaまで平均3.2 ± 2.5 日だった。さらに、Macklin効果がある患者はすべてICU入室を必要とするARDSを発症し、90.1%の症例で侵襲的人工呼吸を行った。






by otowelt | 2022-05-27 00:58 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
カレンダー