ニューモシスチス肺炎に対するST合剤減量投与は有効

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ST合剤の減量投与については、特に予防に関してはエビデンスが蓄積されつつありますが、治療面においても有用な報告が集まってきました(Int J Environ Res Public Health. 2022 Feb 28;19(5):2833.)。

ST合剤には1錠あたりスルファメトキサゾール400mgとトリメトプリム80mgが含まれているので、通常ニューモシスチス肺炎に対して用いる場合、15mg TMP/kg/日だと65kgの人で1日あたり12錠となります(配合顆粒の場合1g=1錠、注射剤の場合1A=1錠)。注射剤は輸液負荷が多くなってしまうので、現実的な選択肢にはならないことがあります。さて、ニューモシスチス肺炎に対して減量投与が可能ならば、ST合剤は1日6錠くらいで良いということになりますね。

主に観察研究をみたシステマティックレビューおよびメタアナリシス(Open Forum Infect Dis . 2020 Apr 2;7(5):ofaa112.)では、解析に含まれた6件のデータを合わせると、標準用量と減量用量を比較した場合、死亡率に統計学的な有意差は観察されませんでした(絶対リスク差-9%,95%信頼区間-27%~8%)。重要な点として、このメタアナリシスでは、グレード3以上の有害事象のリスクも減少していたということが挙げられます(絶対リスク差18%、95%信頼区間-31%~-5%)。

本日紹介する血液悪性腫瘍領域の論文は、CIDからパブリッシュされました。



Hammarström H, et al. Treatment with reduced dose trimethoprim-sulfamethoxazole is effective in mild to moderate Pneumocystis jirovecii pneumonia in patients with hematologic malignancies. Clin Infect Dis. 2022 May 20;ciac386.

  • 概要
■近年の研究によって、ST合剤(TMP-SMX)の減量投与がPneumocystis jirovecii 肺炎(PJP)に有効である可能性が報告されているが、血液悪性腫瘍患者に対するデータは不足している。

■この後ろ向き研究は、スウェーデンの6つの大学病院で2013年から2017年の間にPJPを発症した成人血液悪性腫瘍患者を対象としたものである。7.5~15mgのTMP/kg/日(減量)投与と15~20mgのTMP/kg/日(標準量)投与を腎機能補正後に比較検討した。主要評価項目は、ベースラインから8日目までの呼吸機能(ΔPaO2/FiO2)の変化とした。副次的評価項目は、8日目における臨床的失敗/死亡・30日目における死亡とした。

■対象患者113人のうち、80人が減量投与を受け、33人が標準投与を受けた。全コホートでの30日死亡率は14%であった。8日目のΔPaO2/FiO2において、調整回帰モデルで潜在的交絡因子を調整する前後で、治療群間で有意差はなかった(-13.6 mmHg [95%信頼区間-56.7~29.5]、-9.4 mmHg [95%信頼区間-50.5~31.7])。8 日目の臨床的失敗/死亡、30日死亡率は、それぞれ 18% vs 21%,14% vs 15% で、これにも群間差はなかった。PaO2/FiO2>200 mmHgと定義された軽度~中等度のPJP肺炎患者において、減量投与を受けた44人全員が30日目に生存していた。






by otowelt | 2022-05-24 00:05 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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