結核生存者の長期死亡リスク

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最近、トップジャーナルに抗酸菌の論文が掲載されることが増えた気がします。意図的に見ているということはないのですが、よく目に入ります。

結核治療が完了したにもかかわらず、結核が死亡率に長期に渡って影響を及ぼす疾患であることが分かります。空洞を残すと肺アスペルギルス症や肺NTM症のリスクになることから、抗酸菌感染症は本当にいやらしいなと感じます。

過去メタアナリシスにおいて、死亡リスクが高くなるという報告はありましたが、基本的に発展途上国のデータが多かったのです(Lancet Infect Dis 2019; 19:1129-37)。

低BMIがリスクであることは臨床的にも実感されるところです。おそらくほとんどが独立因子としての作用も有しますが、BMI、栄養、貧血、糖尿病、喫煙歴・・・etcは相加相乗的に作用し、結核の死亡や後遺症のリスクに直結します(Epidemiol Infect. 2022 Jan 13;150:e29.、Clin Infect Dis. 2021 Dec 27;ciab935.)。


Choi H, et al. Long-term mortality of tuberculosis survivors in Korea: a population-based longitudinal study. Clinical Infectious Diseases, ciac411, https://doi.org/10.1093/cid/ciac411

■結核の長期死亡率を評価する際、行動習慣や社会経済的地位の影響を取り上げた研究はほとんどない。そこで、潜在的な交絡因子を考慮し、長期的な結核死亡率とリスク因子を評価することを目的とした。

■このコホート研究では、2010年から2017年の間に20歳以上の結核生存者(n=82,098)、および年齢と性別を1:1にマッチさせたコントロール(n=82,098)を対象とした。研究登録から1年後の死亡について、2018年12月まで追跡調査した。長期死亡率は、行動習慣(喫煙、飲酒、運動)、所得水準、BMI、併存疾患について調整した。

■中央値3.7年の追跡期間中、結核生存者における死亡の発生はマッチコントロールのそれよりも有意に高かった(1,000人年あたり18.2 vs. 8.8, P < 0.001)。潜在的な交絡因子を調整した後でも、死亡リスクは、結核生存者の方がマッチコントロールよりも1.62倍(95%信頼区間1.54-1.70)高かった。

■マッチコントロールに対する結核生存者の死亡リスクは、30歳以上の参加者で有意に増加し、40歳代で最もリスクが高くなった。男性(調整ハザード比[95%信頼区間]:2.31[2.16-2.47])、pack-years(1.005[1.004-1.006])、大酒家(1.12[1.01-1.23])、低所得(1.27[1.18-1.37])は、リスク上昇と正の相関があった。反面、高BMI (0.91[0.90-0.92])、定期的な運動 (0.82[0.76-0.88])は結核生存者の長期的な死亡リスクを下げた。






by otowelt | 2022-05-30 00:57 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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