気管支拡張症の喀血リスク

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気管支拡張症患者の16%が大量喀血を経験しているのが少し解せない部分はあります。実臨床では大量喀血はそこまで多くありませんので・・・。

多変量解析において、よく説明変数の数の10倍以上のサンプル数が望ましいとされますが(異論はあります)、限定的なサンプル数に対して説明変数候補が滅茶苦茶多いという別問題が発生します。多くの説明変数を投入すると、オーバーフィッティングするので、この研究ではそれを抑えるためにAICが用いられています。

大量喀血の定義は24時間に600mLや500mLなど色々な定義がありますが、メスシリンダーで逐一測定しているわけではないので、「こりゃまずい」と思ったら大量喀血でいいと思っています。石川先生の影響でBAEをやられる先生も増えてきたので、アドトラに祈りをささげることは減りました。

糖尿病がリスク因子というのは意外な結果ですね。Discussionには糖尿病が肺血管系に与える影響について書かれていました。確かに血管系に悪影響を与える疾患ですが、喀血リスクを起こすほどの破綻をきたすのかどうかは議論の余地がありそうです。



Luo L, et al. A retrospective analysis of risk factors for massive hemoptysis in patients with bronchiectasis. BMC Pulm Med. 2022 Jun 2;22(1):214.

  • 概要
■大量喀血は気管支拡張症によくみられる致命的な合併症である。しかし、気管支拡張症患者における大量喀血のリスク因子はまだ報告されていない。本研究では、気管支拡張症患者における大量喀血の潜在的リスク因子について検討した。

■本研究は、気管支拡張症患者を対象とし、そのデータを診療録から入手した後ろ向き研究である。大量喀血の危険因子は、患者背景、病歴、病変の数、病変の部位、胸部CT検査などの検査所見を多変量解析することにより評価した。

・本研究の大量喀血の定義
 24時間以内に500mLを超える喀血あるいは1時間に100mLを超える喀血あるいは1回に100mLを超える喀血

■379人中61人(16.09%)が大量喀血を経験した。多変量解析の結果、糖尿病(オッズ比2.885、95%信頼区間1.009-8.247)、2葉の病変(オッズ比4.347、95%信頼区間1.960-9.638)、3葉の病変(オッズ比2.787、95%信頼区間1.055-7.363 )が重症喀血の有意な予測因子であることが分かった。しかし、1~5年の経過(オッズ比0.300;95%信頼区間0.112-0.801)および左下葉の病変(オッズ比0.394;95%信頼区間0.196-0.793)は、大量喀血のリスクを低下させる因子であった。右上葉の病変は、他葉の病変よりも大量喀血を引き起こす可能性が高かった(オッズ比1.458)。






by otowelt | 2022-06-17 00:07 | 呼吸器その他

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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