気管支鏡検査におけるミダゾラム+ペチジン併用の有用性
2022年 06月 04日
当院ではペチジンは使用しておらず、クライオバイオプシーのときのような侵襲度が高い場合にはフェンタニルを使用することが多いです。ペチジンは、ノルペチジン産生性があることから、議論の余地はありますが、呼吸抑制は少ないため有効という報告も増えています。
アルフェンタニルとミダゾラムを用いた研究(Respir Med. 2004;98(11):1102–7.)では、アルフェンタニルが鎮咳作用、ミダゾラムが覚醒苦痛を軽減することが示されており、これは薬理学的にも予測された結果です。ミダゾラム単独とミダゾラム+アルフェンタニル併用療法を比較した別の小規模コホート研究(Respir Int Rev Thoracic Dis. 2010;79(4):307–14.)では、併用療法は苦痛VASの改善とミダゾラムの投与量の有意な減少が報告されています。
消化器内視鏡のほうが先行する臨床試験データが多く、気管支鏡のエビデンスはちょっと遅れをとっている状況です。内視鏡的逆行性胆管膵管造影の検査において、プロポフォール+ペチジンとプロポフォール+フェンタニルのランダム化比較試験(PLoS One. 2015;10(9):e0138422.)がおこなわれており、どちらも同等であったことが示されています。上部消化管内視鏡検査では、ミダゾラムとペチジンまたはフェンタニルを比較した2件のランダム化試験と1件の前向き観察研究があります(Am J Gastroenterol. 1993;88(3):393–6.、Aliment Pharmacol Ther. 2009;29(8):817–23.、Gastrointest Endosc. 2013;77(6):883–7.)。ペチジンとフェンタニルで基本的な差はなさそうです。下部消化管内視鏡検査においても同様の結果ですが、満足度はペチジンのほうが高かったという報告もあります(Aliment Pharmacol Ther. 2009;29(8):817–23)。
とにかく、ミダゾラム単独使用よりは、鎮痛・鎮咳作用のある薬剤を併用したほうがよさそうな印象ですね。
Katsurada M, et al. Randomized single-blind comparative study of the midazolam/pethidine combination and midazolam alone during bronchoscopy. BMC Cancer. 2022 May 12;22(1):539. doi: 10.1186/s12885-022-09640-y.
- 概要
■気管支鏡検査は患者にとって苦痛となりうる。鎮静剤とオピオイドの併用に関する研究はほとんどない。本研究の目的は、気管支鏡検査時のミダゾラムとペチジンの併用の有用性と安全性を検証することである。
■この前向き無作為化単盲検試験において、気管支鏡下生検を受ける予定の患者100人を、検査中にミダゾラムとペチジンの併用投与(併用群)またはミダゾラム単独投与(ミダゾラム群)を受けるようランダムに割り付けた。気管支鏡検査終了後、患者はアンケートに回答し、VASを測定した。主要アウトカムは、視覚的VASで評価した患者の再診断検査等の受け入れ状況とした。また、疼痛レベル、バイタルサイン、ミダゾラム使用、キシロカイン使用、有害事象についても評価した。
■併用群47例、ミダゾラム群49例について解析した。主要評価項目は併用群で良好な傾向を示したが、統計学的な有意差はなかった(併用群3.82 ± 2.3 vs ミダゾラム単独群4.17 ± 2.75,P = 0.400)。併用群では、気管支鏡検査中の疼痛に関するVASが有意に低く(1.10 ± 1.88 vs 2.13 ± 2.42, P = 0.022 )、観察者評価である覚醒/鎮静スケールによる鎮静スコアが有意に深く(3.49 ± 0.98 vs 3.94 ± 1.03, P = 0.031 )となった。試験中の最大収縮期血圧は有意に低く(162.39 ± 23.45 mmHg vs 178.24 ± 30.24 mmHg,P = 0.005)、ミダゾラムの追加投与回数は有意に少なかった(2.06 ± 1.45 vs 2.63 ± 1.35,P = 0.049 )。また、有害事象も有意に少なかった(30 vs 41, P = 0.036)。
by otowelt
| 2022-06-04 16:06
| 気管支鏡