ILDに対するクライオバイオプシー(TBLC)のERSガイドライン


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ERSから刊行されたILDに対するクライオバイオプシー(TLBC)のガイドラインです。




■PICOクエスチョン 1:SLB の適応があると可能と考えられる未診断 ILD 患者において、TBLC は有効な代替検査であるか?
 推奨:SLB の適応があると考えられる未診断 ILD 患者に対して、タスクフォースは、病理組織学的 データの取得が必要な場合は TBLC を実施することを推奨する(条件付き推奨)。
 ※備考:この勧告は、TBLC の実施に経験のある施設に適用される。

■PICOクエスチョン 2:SLBの適応がないと考えられる未診断ILD患者において、TBLC はMDDによる議論の診断の信頼性を高めるか?
 推奨:SLB の適応がないと考えらる未診断ILD 患者に対して、タスクフォースは、病理組織学的 データの取得が必要な場合には TBLC を行うことを推奨する(条件付き推奨)。
 ※備考:この勧告はTBLCの実施経験がある施設に適用される;TBLCを実施することで診断の確実性が増す可能性がある利点と、重篤な有害事象の可能性があるという欠点を、個々の患者について比較検討する必要がある。

■PICOクエスチョン3:未診断ILD で、TBLC で情報が十分に得られない患者において、ステップアップ SLB または 2 回目の TBLC は有効な追加検査か?
 推奨:未診断ILD で、TBLCで情報が十分に得られない患者において、タスクフォースはステップアップ SLB を実施することを推奨する(条件付き推奨)。なお、2回目のTBLCについてはエビデンスがないため推奨していない。

■PICOクエスチョン4: 未診断 ILD 患者において診断率を最適化し、有害事象を最小限に抑えるために、 TBLC の正式なトレーニングは推奨されるか?
 推奨:タスクフォースは、TBLC十ツ社がトレーニングを受けるべきであることを支持する(条件付き推奨)が、最適なトレーニングがどのような種類かはエビデンスがない。

■ナラティブクエスチョン1:生検の第一選択としてTBLCを導くような特定のHRCT所見はあるか?
 エビデンスの要約:タスクフォースは、特定のHRCT所見(例:肺の高・低吸収領域、結節および小結節パターン、小葉中心性分布、ランダム分布、網状パターン)を有する患者(のサブグループ)における TBLCの性能と安全性を評価する研究を特定することを目指した。しかし、そのような研究は確認されていない。特定の HRCT 所見を有する患者における TBLC の診断効果や有害事象を、病理組織学的データを得る他の方法(例えば、通常鉗子による TBLB や SLB)と比較する前向き研究を実施することが推奨される。

■ナラティブクエスチョン2:未診断ILD患者におけるTBLCのリスクは何か?
 要約と推奨:手技リスクの高い患者におけるTBLCの有害事象に関する証拠は限られており、上記の研究のほとんどは少数の患者のみを対象としているため、検出力が低く、信頼区間も広い。高施設からのデータでは、高齢、高BMI、心機能障害、肺機能障害(FVC<50%またはDLCO<30%)であってもTBLCは比較的安全に実施できる可能性があることが示唆される。重篤な有害事象のリスクは、急性低酸素性呼吸不全や急速に進行するILDの入院患者において特に高い。文献上では安心できる部分もあるが、実際の診療経験が少ない施設では、患者選択には保守的なアプローチが推奨される。今後、どのような高リスクの患者に対して比較的安全にTBLCを実施できるかを評価するために、熟練した施設で実施される前向き研究が必要である。







by otowelt | 2022-06-20 08:47 | びまん性肺疾患

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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