高齢者肺MAC症の治療転帰
2022年 06月 22日
名古屋市立大学の森祐太先生が筆頭著者の論文です。PubMedではなくJournal of Infection and Chemotherapyのウェブサイトを見て知りました。年始にアクセプトをもらって、調子に乗って投稿したらリジェクトされたからです。
(´;ω;`)ウウッ・・・
limitationにも書かれていましたが、統計学的に有意でないもののパーセンテージにはそれなりの差があるように思われます。症例数がもっとあるとリスク因子の解析もできるので、さらに症例を蓄積いただきたいところです。
Mori Y, et al. Tolerability, adverse events, and efficacy of treatment for Mycobacterium avium complex pulmonary disease in elderly patients. J Infect Chemother. 2022 Jun 17;S1341-321X(22)00152-0.
- 概要
■日本では、高齢化に伴い肺Mycobacterium avium complex(MAC)症患者が高齢者に増加しているが、高齢者のMAC肺疾患患者に対する治療を報告した研究はほとんどない。我々は、高齢者と非高齢者の肺MAC症に対する治療の忍容性、有害事象、有効性の違いを評価するために、後ろ向きコホート研究を実施した。
■2014年4月から2019年3月までに名古屋市立大学病院で新規に診断された肺MAC症患者96例の診療録をレビューした。
■診断時の平均年齢は69.0±12.5歳、高齢者41名で80.2±4.7歳、非高齢者55名で61.0±9.9歳だった。女性およびNB型が優勢であった(それぞれ、全体では72.9%および75.0%、高齢者群では68.3%および68.3%、非高齢者群では76.4%および80.0%)。BMIは高齢者群が非高齢者群より有意に低かった(17.9 ± 3.0 vs. 19.8 ± 3.2, P = 0.014)。基礎疾患の有病率は、高齢者群65.9%、非高齢者群47.3%だった(P = 0.070)。診断時に分離された菌株はすべてCAMに感受性を示した。治療を受けた高齢者は、治療を受けなかった高齢者に比べて咳・痰・発熱などの症状が有意に多かった。一方、非高齢者では治療を受けた患者と受けなかった患者の特徴に差はなかった。
■75歳以上の高齢者は、75歳未満の非高齢者よりも、多剤併用療法の開始頻度が低かった(41例中17例,41.5% vs. 55例中41例,74.5%,P=0.001)。いずれの年齢層でも間欠的レジメンを投与された患者はいなかった。高齢者3例(17.6%),非高齢者6例(14.6%)が全薬剤を中止していた。高齢者よりも非高齢者の方がRFPを中止・減量した患者が多かった(全体で39.7%、高齢者群で29.4%、非高齢者群で43.9%)。
■高齢者11例と非高齢者19例が、最初の多剤併用療法を継続した(64.7% vs 46.3%,P = 0.26)。有害事象は、高齢者6例と非高齢者25例に発生した(35.3% vs 61.0%,P = 0.074)。主な有害事象は、高齢者群では消化器障害(4例、23.5%)、皮膚障害(2例、11.8%)、非高齢者群では皮膚障害(9例、22.0%)、肝機能障害(7例、17.1%)、消化器障害(5例、12.2%)だった。
■1年以上の治療による喀痰陰性化および放射線学的な改善の達成率は、高齢者と非高齢者で同等だった(61.5% vs. 75.0%, P = 0.37; 76.9% vs. 78.1%, P = 1)。
by otowelt
| 2022-06-22 01:14
| 抗酸菌感染症