JADERデータベースを用いた肺MAC症治療の副作用報告
2022年 07月 01日
Weibull分布は時間対障害率の分布で、形状はβ値によって示されます。たとえば、β=1は時間と関係なくハザードが一定となるランダム障害型、<1はハザードが早期に高くピークをつける初期障害型、>1では時間とともにハザードが増加する磨耗障害型になります。
肺MAC症に対するEBの副作用については報告バイアスが大きいため、「なんとなく目がぼやける」→「やめましょうか」ということもあり(しばしば原因は別だったりする)、真の眼科的副作用をみる場合、眼科医の併診が必要になります。
Ozawa T, et al. Analysis of adverse drug events in pulmonary Mycobacterium avium complex disease using spontaneous reporting system. BMC Infect Dis. 2022 Jun 29;22(1):580.
- 概要
■日本において、肺MAC症は肺非結核性抗酸菌症のうち最も多い疾患である。患者はしばしば有害事象を経験し、その結果、治療が中断され、治療失敗の原因となる。JADER(Japanese Adverse Drug Event Report)データベースは、有害事象に関するリアルワールドのデータを収集することができるデータベースである。大規模なデータを収集し、自発的な報告システムを利用することで、報告オッズ比(ROR)などの有害事象シグナルを検出することができる。本研究では、JADERデータベースを用いて、クラリスロマイシン(CAM)、エタンブトール(EB)、リファンピシン(RFP)の副作用データを収集した。
■2004年4月~2017年6月の肺MAC症を対象とした。性別、年齢、有害事象の原因となった可能性のある薬剤、アウトカム、発症時期について調査した。安全性シグナル指数をRORとして算出した。Time-to-event解析はWeibull分布を用いて行った。
■CAM,EB,RFPの有害事象は合計2780件,806人だった。有害事象全体では,血液・リンパ系障害が17.3%と最も多く、次いで眼科系障害16.6%、肝胆膵系障害14.0%であった。転帰は、回復40.0%、寛解27.1%、非回復11.2%、死亡7.1%であった。発症時期については、CAMは120日以内が40%、EBは181日〜300日が43.6%、RFPは120日以内が88.5%だった。
■CAMでは、感染症および蔓延症、肝胆道系障害、免疫系障害のRORは、4.13(95%信頼区間2.3-7.44)、2.61(95%信頼区間1.39-4.91)および2.38(95%信頼区間1.04-5.44)であった。EBについては、眼科疾患のRORは215.79(95%信頼区間132.62-351.12)であった。RFPでは、腎臓・尿路障害のRORは7.03(95%信頼区間3.35-14.77)および6.99(95%信頼区間3.22-15.18)であった。また、EBのβは2.07(95%信頼区間1.48-2.76)であり、摩耗障害型に分類された。
by otowelt
| 2022-07-01 00:54
| 抗酸菌感染症