メタアナリシス:中等度低酸素血症があるCOPD患者への在宅酸素療法は生存率改善に寄与しない
2022年 07月 27日
労作時の低酸素血症がある症例では当然ながら生存的な不利益があることがわかっており(Respir Med . 2021 Apr 6;182:106393.)、労作時あるいは夜間低酸素血症を制御できれば生存的な利益になるのではないかという見解がありました。
しかし、LOTT研究(N Engl J Med 2016; 375:1617-1627)およびINOX研究(N Engl J Med 2020; 383:1129-1138)において、そのいずれもが否定的となっています。
今日紹介するのはそれらを含んだ、メタアナリシスです。
個人的には、①労作時のみに低酸素血症を有する症例に対して、在宅酸素療法を導入するとQOLが改善し、外出機会が増える。②患者が「症状が楽になる」という何よりのアウトカム、の2点において、COPD患者さんにおける在宅酸素療法の閾値をやや低めに設定しています。
Lacasse Y, et al. Home oxygen for moderate hypoxaemia in chronic obstructive pulmonary disease: a systematic review and meta-analysis. Lancet Respir Med. 2022 Jul 8;S2213-2600(22)00179-5.
- 概要
■長期酸素療法(LTOT)は慢性閉塞性肺疾患(COPD)で重度の低酸素血症を有する患者の生存率を向上させる。しかし、LTOTの適応とならない中等度低酸素血症(夜間のみの酸素飽和度低下を含む)の最適な管理方法は不明である。COPDと中等度低酸素血症を有する患者において、在宅酸素療法(LTOTまたは夜間酸素療法)が全生存に及ぼす影響を検討した。
■2022年1月13日までに、COPDで中等度の日中の低酸素血症または夜間のみの酸素飽和度低下、あるいはその両方を有する患者において長期または夜間の酸素の並行群間ランダム化試験を検索した。対照群として、試験期間中、通常のケアまたは偽酸素濃縮器(プラセボ)による外気投与群を容認した。
■主要評価項目は3年死亡率とした。クロスオーバー試験および重度の低酸素血症における酸素療法の試験は除外された。個々の研究をプールするためにランダム効果メタアナリシスをおこなった。在宅酸素の臨床的に重要な最小限の差は、3年追跡時の死亡率の相対リスク減少が30~40%であると規定された。
■2192件の研究を同定し、重複を排除した上で1447件をスクリーニングし、そのうち161件に全文スクリーニングをおこない、6件を組み入れた。これら6件のランダム化試験は1992年から2020年の間に発表されたもので、エビデンスの質は高いものであった。一次メタアナリシス(5試験;1002人)では、3年死亡率に対する在宅酸素療法の効果は小さい・あるいは無いことがわかった(相対リスク0.91[95%信頼区間0.72-1.16])。
by otowelt
| 2022-07-27 00:47
| 気管支喘息・COPD