皮膚非結核性抗酸菌症の疫学
2022年 08月 13日
皮膚NTM感染症の報告をレビューしてまとめたもの。数としてはもっと多いと思っていたのですが、5年間で100例未満しか論文化されていないのですか。にしても、女性に多いわけではないのですね。
肺は、解剖学的に中葉舌区が女性で弱いという説や、保護的な役割であった女性ホルモンが減少することで気道免疫が弱くなるという説がありますが(Clin Exp Immunol. 2001 Mar;123(3):428-34.、BMC Infect Dis. 2019 Dec 16;19(1):1055.)、これもまだ理由がよく分かっていないと思います。
卵巣切除マウスの前者の論文は当院の露口先生の京大時代の論文です。
Fujishima C, et al. Cutaneous nontuberculous mycobacterial infections in Japan: Review of the Japanese literature. J Dermatol . 2022 Jul 29. doi: 10.1111/1346-8138.16531.
■非結核性抗酸菌(NTM)症は、免疫不全者、免疫不全者を問わず、皮膚感染症を含む広範な感染症を惹起する。近年、日本では肺NTM症が著しく増加しているが、日本における皮膚NTM症の臨床的・微生物学的特徴に関するエビデンスは少ない。2016年7月から2021年11月までに報告された日本人86例を検討し、2015年から2021年の間に培養により皮膚NTM症と診断された当院の患者8例と合わせて解析した。
■全体の患者の平均年齢は60歳、免疫不全宿主の割合は53%であり、いずれも他国の先行報告より高かった。また、肺NTM症とは異なり、女性優位性は認められなかった。症例数は、RGMが58%(n=54)、SGMが43%(n=40)であった。
■原因菌はMycobacterium marinum(n=20,21%)が最も多く、次いでM. chelonae(n=18,19%)、M. abscessus(n=15,16%)、M. ulcerans(n=11,12%) であった。臨床症状はさまざまであったが、M. ulcerans症では潰瘍が多く、M. chelonae症とM. marinum症では結節が多くみられた。多臓器への播種性感染は23例(24%)に認められた。32例(30%)は、魚の飼育や処理、外傷、侵襲的な医療処置などの曝露が先行した症例であった.ほとんどの症例で2種類以上の抗菌薬が投与され、治療に奏効した。
by otowelt
| 2022-08-13 00:25
| 抗酸菌感染症