酸素飽和度が保たれた市中肺炎に対する超短期抗菌薬
2022年 08月 21日
この論文を読んだ日本人の10人に2人くらいは、B'zの音楽で「ウルトラショーッ!」が流れると思っています。
「抗菌薬で治療すべき市中肺炎とは何なのか」、という抗菌薬の根本的な位置づけを再考させる興味深い論文です。
- 概要
■肺炎疑いの入院患者において抗菌薬が適応となるが、しばしば過剰診断される。我々は、正常の酸素化を指標として抗菌薬の早期中止が可能であるかどうかを検討した。
■2017年5月~2021年2月に、4病院で肺炎のために抗菌薬の投与を開始した患者のうち、室内気の酸素飽和度が95%以上の患者全員を後ろ向きに同定した。1~2日治療した患者と5~8日治療した患者を傾向スコアマッチし、院内死亡率と退院までの時間を部分分布ハザード比(SHR)を用いて比較した。副次的アウトカムとして、再入院、30日死亡率、Clostridioides difficile感染症、hospital-free days、抗菌薬無使用日数が含まれた。
■肺炎の可能性があるということで治療を受けた患者39,752人のうち、酸素飽和度中央値が95%以上で酸素投与を行わなかったのは10,012人であった。そのうち2,871人が1-2日、2,891人が5-8日の抗菌薬治療を受け、4,478人が傾向スコアマッチされた。1~2日治療と5~8日治療を受けた患者の病院死亡率は同等だったが(2.1% vs 2.8%,SHR 0.75,95%信頼区間0.51-1.09)、退院までの期間は1~2日治療群のほうが短く(6.1日 vs 6.6日,SHR 1.13,95%信頼区間1.07-1.19)、30日hospital-free daysは多く(23.1日 vs 22.7日,平均差 0.44,95%信頼区間0.09-0.78)なった。30日再入院(16.0% vs 15.8%、オッズ比1.01、95%信頼区間0.86-1.19)、30日死亡率(4.6% vs 5.1%、オッズ比0.91、95%信頼区間0.69-1.19)、90日C. difficile感染率(1.3% vs 0.8%、オッズ比1.67、95%信頼区間0.94-2.99)では有意差はなかった。
by otowelt
| 2022-08-21 00:23
| 感染症全般