集中治療を要する結核は診断の遅れが起こりやすい

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写真はBDの真菌・抗酸菌の血液培養ボトルです。昔は、粟粒結核を疑ったときに抗酸菌用血培をよくとっていたのですが、粟粒結核でも重症結核でも基本的な治療法が変わらないので、もう抗酸菌用血培自体がレガシーとなりつつあります(たぶん)。培養ボトルにはサポニンとポリアネソールが含まれており、前処理不要でボトルにズブシッと刺すことが可能です。遠心分離して培地に接種するのではなく、自動分析で判定しますので、迅速かつ高感度という点がウリです。

粟粒結核の診断のトレンドは、喀痰+尿の結核菌検出のパターンです。尿中抗酸菌は簡便に用いることができるのでオススメです。

Thoraxから興味深い研究が報告されました。個人的に重症結核というのは、塗抹2+~3+がわんさか出てくるARDSをイメージしているのですが、この研究に約3割登録されている「しこたま検査したけど培養のみが陽性」というのは、「集中治療を要する結核」という像からは少し遠い気がしています。もちろん、その時の主治医にしか分からないこともあるでしょうけど。




So C, et al. Population study on diagnosis, treatment and outcomes of critically ill patients with tuberculosis in Hong Kong (2008-2018). Thorax. 2022 Aug 18;thoraxjnl-2022-218868.

  • 概要
■結核は予防と治療が可能な疾患であるが、敗血症や重症結核に陥った患者の死亡率は依然として高い。

■2008年4月1日~2019年3月31日に香港の公的成人ICUに入院した患者を対象とした、集団ベースの多施設共同後ろ向きコホート研究である。結核菌培養が1回以上陽性であった成人重症患者940人を同定した。一般化線形モデリングを用いて、結核治療の遅れが病院死亡率に及ぼす影響を明らかにした。11年間におよぶAPACHE IV調整標準化死亡比の年次推移をMann-Kendall傾向検定により分析した。

■ICUおよび病院での死亡率はそれぞれ24.7%(232/940)および41.1%(386/940)だった。ICUで死亡した患者のうち、22.8%(53/232)が抗結核薬の投与を受けなかった。ICUの結核患者のSMRは研究期間中変化しなかった(Kendall順位相関係数0.37、p=0.876)。年齢、Charlson comorbidity index、APACHE IV、血清アルブミン、血管作動薬、人工呼吸装着、腎代替療法を調整した結果、結核治療の遅れは病院での死亡率と直接的に関連していることが示された。

■302/940例(32.1%)では、Ziehl-Neelsen染色や結核菌PCRが行われなかったか、それらが陰性で、結核は培養のみから確定診断されている。この集団では、結核菌PCRをおこなわれたのは31.1%(94/302)であった。







by otowelt | 2022-09-22 00:45 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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