HIV PCPにおける早期ARTと遅延ARTの比較

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現在のガイドラインでは、PCP治療開始後2週間以内に、できればPCP治療が安定した時点でARTを開始することが推奨されています(Panel on Opportunistic Infections in HIV-Infected Adults and Adolescents. Guidelines for the prevention and treatment of opportunistic infections in HIV-infected adults and adolescents: Recommendations from the Centers for Disease Control and Prevention, the National Institutes of Health, and the HIV Medicine Association of the Infectious Diseases Society of America.)。

早期ARTと遅延ARTのどちらがよいかは長らく議論されていますが、日和見感染症を発症したHIV感染者におけるランダム化比較試験では、早期ARTによってAIDSの進行と死亡のリスクが半減し、IRISや有害事象も増やさなかったと報告されています(PLoS One. 2009;4(5):e5575. )。

今回、中等症から重症のAIDS/PCP患者におけるARTの早期開始を再度支持する結果が報告されています。ただ、前向き観察研究という点がネックです。



Zeng YM, et al. Initiating antiretroviral therapy within 2 weeks of anti-Pneumocystis treatment does not increase mortality or AIDS-defining events in patients with HIV-associated moderate to severe Pneumocystis pneumonia: results of a prospective observational multicenter study. BMC Pulm Med. 2022 Aug 25;22(1):323.

  • 概要
■ニューモシスチス肺炎(PCP)とHIVの重複感染者では、死亡率が高い。しかし、中等度から重度のPCPと診断された後の抗レトロウイルス療法(ART)の開始時期については、依然として議論のあるところである。そこで我々は、AIDS関連PCP(AIDS/PCP)患者におけるART開始の最適なタイミングを明らかにするために本研究を立案した。

■多施設共同前向き観察研究である。対象者は中国本土の14病院から集められ、早期ART群(PCP診断後14日以内のART開始)と遅延ART群(PCP診断後14日以降のART開始)に割り付けられた。主要アウトカムは、48週目における死亡とAIDS指標イベントの発生率であった。副次的アウトカムは、12、24、48週目のCD4陽性T細胞数のベースラインからの変化、24週目と48週目のウイルス学的抑制率、PCP関連IRISの発症率、48週目の有害事象の発生率とした。

■363人の参加者のうち、169人が早期ART群、194人が遅延ART群に割り付けられた。免疫学的およびウイルス学的アウトカムは、両治療群で同等であった。48週目の死亡率(20% vs 26%、p=0.860)、AIDS指標イベントの発生率(17% vs 26%、p=0.412)には有意差はなかった。48週間時点で、PCP関連IRISの発生率(2% vs 3%、p = 1.000)、有害事象(70% vs 72%、p = 0.465)、グレード3または4の有害事象(28% vs 34%、p = 0.919)に有意差はなかった。

■早期ART群では11人(55.0%)が、遅延ART群では23人(88.5%)が、ART開始前に死亡した(p = 0.026)。






by otowelt | 2022-09-09 00:26 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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