ZeNix試験:BPaLレジメンにおけるリネゾリドの最適用法用量を模索

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抗酸菌診療をされている先生には釈迦に説法なのですが、BPaLは、ベダキリン・プレトマニド・リネゾリドの3剤による治療法で、維持期は1日わずか5錠の服用でXDRTBを治療することができる画期的な治療法です。長期的なエビデンスがまだ不十分でないため、WHOは現状ではBPaLはフルオロキノロン耐性でベダキリンやリネゾリドの内服歴がないXDRTBに考慮すべきと明言しています。

このうちリネゾリドの錠数をもう1つ減らして、維持期BPaL4錠でどうでしょうか、という試験結果がNEJMに報告されました。これはリネゾリドの忍容性に問題があるためで、XDRTB患者さんにとって長期的なベストな治療法かどうかはまだ分かりません。

結論としては、リネゾリドの用法用量が少ないほど、その副作用も少なくなることが示されました。下図に引用している「Time to Linezolid Dose Modification」を見ると、1200mg/日よりは600mg/日のほうが忍容性が高く継続できるのは間違いありません。高い培養陰性化を達成できることから、Discussionでは600mg/日×24週間が推奨されています。

ちなみに、Nix-TB試験のときと異なり、ベダキリンの用法用量がPKモデリング最適化によって変更されています。



  • 概要
■ベダキリン・プレトマニド・リネゾリド併用療法(BPaL)は、耐性結核に対して90%の有効性が報告されているが、リネゾリド1日1200mg投与による有害事象の発現率は高い。高度薬剤耐性結核に対する有効性を維持しつつ、副作用を最小限に抑えるためのリネゾリドの適切な投与量および投与期間については不明である。

■XDRTB(INH、RFP、キノロン、アミノグリコシドのすべてに耐性)、pre-XDRTB(INH、RFP、キノロン or アミノグリコシド耐性)、またはRFP耐性結核で治療効果がない・忍容性がない患者が登録された。

■ベダキリンを26週間投与(200 mg/日を8週間、その後100 mg/日を18週間)、プレトマニド(200 mg/日を26週間)、リネゾリドを1日1200mgを26週間または9週間、600mgを26週間または9週間の用法用量で投与する4群にランダム化割り付けした。修正ITT集団における主要評価項目は、治療終了後26週時点での治療失敗または疾患再発(臨床的または細菌学的)で定義された好ましくない結果の発生率とした。

■181人の参加者が登録され、その88%がXDRTBまたはpre-XDRTBだった。BPaにリネゾリド1200mg 26週群、1200mg 9週群、600mg 26週群、600mg 9週群に割り付けられた患者のそれぞれ93%、89%、91%、84%に良好なアウトカムが得られた。有害事象は、末梢神経障害がそれぞれ38%、24%、24%、13%に、骨髄抑制が22%、15%、2%、7%に発生した。リネゾリドの用量が変更(中断、減量、または中止)されたのは、それぞれ51%、30%、13%、13%だった。視神経障害は、1200 mgの用量で26週間投与した4例(9%)に発現したが、全例で消失した。

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by otowelt | 2022-09-05 01:34 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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