トリプル吸入療法からのICS離脱の臨床的・経済的影響


COPD患者さんにおいて、理念を持ってICSを離脱しても、その後の増悪が増えたり医療コストが増えてしまえば何のための離脱なのかわかりません。

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. COPDに対してICSを上乗せする条件

ICS離脱による1秒量減少や増悪頻度の増加は、たとえばベースラインの末梢血好酸球数が300/μl以上ある集団で有意であることが示されています(SUNSET研究:Am J Respir Crit Care Med. 2018 Aug 1;198(3):329-339.)。



García VN, et al. Clinical and Economic Impact of Long-Term Inhaled Corticosteroid Withdrawal in Patients with Chronic Obstructive Pulmonary Disease Treated with Triple Therapy in Spain. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis . 2022 Sep 7;17:2161-2174.

  • 概要
■ICS/LABA/LAMAのトリプル吸入療法を受けているスペインのCOPD患者において、ICSを離脱することの臨床的・経済的影響を明らかにすること。

■BIG-PACデータベースの診療録を用いた後ろ向き観察研究である。2016年~2018年にトリプル吸入療法を実施された40歳以上の患者を1年間追跡した。トリプル吸入療法を継続する場合と、そこからICSを離脱した場合の2コホートを同定した。変数には、投薬、増悪(中等度、重度)、肺炎、死亡率、医療資源使用量、患者1人あたりのコスト/年が含まれた。傾向スコアマッチングによりコホートを比較した。共分散分析およびCox比例リスクを用いた多変量統計解析が行われた。

■対象患者6541人中、5740人(87.8%)がトリプル吸入療法を継続し、801人(12.2%)がICSを離脱した。ICSを離脱した患者は、ICSを継続した患者に比べ、若年で、疾患負荷が低く、ICS投与量が多く、増悪の頻度が高かった。傾向スコアにより、各コホートの795人の患者をマッチした。平均年齢は68.5±11.2歳、69.9%が男性、平均Charlson indexは2.0であった。ICSを離脱した患者は、中止後12か月間の総増悪回数がトリプル吸入療法を継続した患者に比べ多かった(36.6% vs 31.4%;p=0.030 )。肺炎(3.3% vs 3.6%、p=0.583)、死亡率(9.9% vs 7.5%、p=0.092)は有意差がなかった。初回増悪までの期間中央値は、ICSを離脱した患者の方が、ICSを継続した患者よりも短かった(ハザード比0.69、95%信頼区間0.57-0.83、p<0.001)。ICS離脱患者における患者1人あたりの平均医療費は、トリプル吸入療法継続患者よりも高かった(2993ユーロ vs 2130ユーロ、p<0.001)。






by otowelt | 2022-09-28 00:47 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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