好酸球性喘息+COPDに対する抗IL-5治療

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喘息とCOPDを合併した、いわゆるACOにおいてはメポリズマブやベンラリズマブといった抗IL-5治療が有効であることが示された形となります。COPD単独では厳しくて、おそらく好酸球性フェノタイプのあるCOPDでは有効と考えられますが、ただのCOPDではおそらく無効でしょう。

COPDに対して、喘息用のモノクローナル抗体が有効かもしれない、という報告はこれまでもいくつかあります。たとえば、 末梢血好酸球数が150/µL以上でトリプル吸入療法であっても増悪が抑制できない重症COPD患者さんにおいて、メポリズマブはプラセボと比較して増悪率をわずかに減少させたとされています(METREX試験:率比0.82, 95%信頼区間0.68-0.98; METREO試験:率比0.80, 95%信頼区間0.65-0.98)(N Engl J Med. 2017;377(17):1613. Epub 2017 Sep 11.)。ベンラリズマブについては、前年度に3回以上の増悪があり、トリプル吸入療法を使用していて、かつ末梢血好酸球数が220/μL以上という条件を持っているサブグループのみに有意な増悪抑制効果がみられています(Lancet Respir Med. 2020;8(2):158. Epub 2019 Sep 28.)。


Drick N, et al. Treatment with IL-5/IL-5R antibodies in patients with severe eosinophilic Asthma and COPD. ERJ Open Research 2022; DOI: 10.1183/23120541.00207-2022

  • 概要
■抗インターロイキン-5/インターロイキン-5受容体抗体による抗好酸球療法は、重症好酸球性喘息(SEA)患者に対する確立した治療法であるが、COPD患者に対する臨床効果は示されていない。この研究の目的は、喘息および COPD 患者における抗好酸球療法に対する治療効果を評価することである。

■傾向スコアマッチングを用いて、SEAとCOPDを合併した患者、SEAのみを合併した患者を1:1の割合で組み入れた。肺機能検査、経口ステロイド投与量、QOL、症状コントロールを後ろ向きに比較した。全患者は、メポリズマブまたはベンラリズマブのいずれかの治療を受けた。データは、抗体療法開始前・開始6か月後に評価された。

■84例の患者(SEA+COPD患者42例、SEA患者42例)のデータが分析された。治療開始6か月後、両群で1秒量の改善(SEA+COPD群11%[IQR 5;18]vs SEA群15%[IQR -3;23]、p=0.637)、経口ステロイド投与量の減少(SEA+COPD群5mg vs SEA群3mg、p=0.070)が観察されたが、有意差はなかった。症状コントロールとQOLは両群で改善した。好酸球の有意な減少が両群で測定された。






by otowelt | 2022-10-14 00:30 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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