胸水ADA高値例の臨床的特徴
2022年 09月 23日
「レトロでやるにしても数が多すぎるやろ・・・、いや10年って・・・、どのくらい時間かかってんねんこれ・・・」とツッコミを入れながら読ませていただきました。さすがレジェンド下田先生です。第2の下田先生を目指そうと思っても、どうやってこんな作業をやってるのか、まず教授いただかないと。
この論文のすごいところは、ADAが40 IU/L以上の胸水に関して非常に信頼性の高い疫学的データを包括していること、結構細かいデータまでみている(培養病原微生物まで調べている、スゴイ)、最後にフローチャートまで作っているところです。その3歩くらい前で、「これでヨシ」と満足して執筆止まりますよ、普通は。
Shimoda M, et al. Characteristics of pleural effusion with a high adenosine deaminase level: a case-control study. BMC Pulm Med. 2022 Sep 21;22(1):359.
■胸水ADA値は結核において中央値は83.1 U/L(IQR67.2-104.1)で、胸腔感染症(中央値60.9 U/L[IQR 45.3-108.0],p = 0.004)と比較して高値だった。また、悪性胸水(中央値54.1[IQR 44.8-66.7]、p<0.001)、自己免疫疾患(中央値48.5[IQR 45.9-58.2]、p=0.008 )よりも高く、NTM (p=1.000) または悪性リンパ腫 (p=1.000 )との有意差はなかった。
■胸水ADAの上昇は結核性胸膜炎の診断に有用であるが、他疾患とも関連している。本研究では、高ADA胸水患者における様々な疾患特性を比較検討した。
■2012年1月から2021年10月までに胸水ADA≧40 U/Lの患者456例のデータを後ろ向きに収集した(複十字病院および杏林大学)。807例のうち、原因不明などの例をのぞき456例が登録された。
■2012年1月から2021年10月までに胸水ADA≧40 U/Lの患者456例のデータを後ろ向きに収集した(複十字病院および杏林大学)。807例のうち、原因不明などの例をのぞき456例が登録された。
■頻度の高い疾患は結核であった(40.0%)。症例は結核(203例)(菌証明・病理学的示唆・治療的診断の3パターン)、胸腔感染症(112例)(68検体から細菌が検出され、連鎖球菌38例,嫌気性菌13例,ブドウ球菌11例,腸内細菌2例,その他8例)、悪性胸水(63例)(肺癌43例,転移性腫瘍9例,悪性中皮腫8例)、NTM(22例)(Mycobacterium avium 12例,Mycobacterium intracellulare 3例,Mycobacterium kansasii 2例,Mycobacterium abscessus1例、Mycobacterium fortuitum1例)、悪性リンパ腫(18例)、自己免疫疾患(11例)(関節リウマチ5例、血管炎3例、IgG4関連疾患2例、シェーグレン症候群1例)、その他(27例)(慢性結核性膿胸13例、気胸6例、血胸3例、石綿胸水3例、薬剤性胸水2例)に分類し、これらの疾患間でデータを比較検討した。予測因子は、対象疾患とそれ以外の疾患のデータを比較することで同定した。これらの要因をもとに、結核の診断フローチャートを作成した。
■胸水ADA値は結核において中央値は83.1 U/L(IQR67.2-104.1)で、胸腔感染症(中央値60.9 U/L[IQR 45.3-108.0],p = 0.004)と比較して高値だった。また、悪性胸水(中央値54.1[IQR 44.8-66.7]、p<0.001)、自己免疫疾患(中央値48.5[IQR 45.9-58.2]、p=0.008 )よりも高く、NTM (p=1.000) または悪性リンパ腫 (p=1.000 )との有意差はなかった。
■胸水LDHは、以下の通り。結核(中央値395 IU/L [IQR 255-738])、胸腔感染症(中央値3103.7 IU/L [IQR 1713.3-7597.3], p < 0.001) 、悪性胸水(中央値1024.0 IU/L [IQR 454.8-2440.7], p < 0.001), NTM (中央値913.6 IU/L [IQR 441.3-1771.2], p= 0.047), 悪性リンパ腫 (median 1771.2 IU/L [IQR 774.3-3576.5]), 他疾患 (中央値2156 IU/L [IQR 1178-5428], p < 0.001)。
■胸水ADA/TP比は、結核(中央値17. 7 [IQR 14.9-22.4], p < 0.001), 胸腔感染症(中央値 14.5 [IQR 10.3-27.2], p < 0.001), NTM(中央値 23.1 [IQR 19.1-28.6], p < 0.001) 、悪性リンパ腫(中央値 26.8 [IQR 15.8-53.1], p < 0.001)と比べて、悪性胸水 (中央値9.89 [IQR 7.95–12.1]) で有意に低かった。
■結核性胸膜炎の胸水LDH/ADA比(中央値5.1 [IQR 3.4-8.0] )は,胸腔感染症(中央値51.5 [IQR 33.2-78.0], p < 0. 001)、悪性胸水(中央値20.6[IQR 8.0-37.8],p<0.001) 、悪性リンパ腫(中央値18.4[IQR 7.3-24.1],p=0.011) 、その他(中央値28.5[IQR 16.7-49.1],p<0.001 )と比較して低かった。
■胸水LDH<825 IU/Lであることが結核の診断に有効であった。好中球優位または細胞変性、末梢血白血球数9200/μL以上,末梢血CRP値12 mg/dL以上は胸腔感染症の診断に有用であった。胸水アミラーゼ値が75 U/L以上、胸水ADA/TP比<14は、悪性胸水の診断に有用であった。血清LDH高値,血清/胸水好酸球高値は,それぞれ悪性リンパ腫,自己免疫疾患の診断に有用であった。
■フローチャートは,胸水LDH<825 IU/L,胸水ADA/TP<14,好中球優位または細胞変性の3因子からなる。結核診断の診断精度、感度、特異度は,それぞれ80.9%,78.8%,82.6%だった。
by otowelt
| 2022-09-23 07:31
| 呼吸器その他