国内で終末期の苦痛に関するガイドライン等が整備されていく過程で、渦中にいる人なら必ず目に通さないといけない、重要な提言が書かれています。私のような中堅医にとっては、1つ1つが魂に染みわたるチャプターでした。発売日:2022年8月29日
単行本 : 240ページ
価格 : 4,500円 (税別)
出版社 : 医学書院
著者: 森田達也先生
私が医師になった頃、日本の緩和ケアはガラパゴス的な部分が多分にありました。我流の対応も多く、緩和ケアを専門にしていない医師は、日々苦悩しながら終末期の患者さんと向き合っていました。
森田先生は間違いなく国内の緩和ケアの歴史を変えた偉人で、前著に私も非常に刺激を受けました。コンフリクトが多いテーマでもちゃんと熱い湯の中に入り、汗をかいて、単著でまとめあげられるバイタリティには、正直脱帽しかありません。
序盤は国内外の緩和ケアの差異について書かれています。国際的には安楽死・自殺幇助の合法化がすすんできており、日本では特に後者は到底容認されるものではありません。法律が関わる部分ですから、日本ではなかなかこの議論がすすまないかもしれません。しかし敢えてこうしたデリケートなテーマを取り上げるところに、筆者の熱量を感じます。
この本は非常にエビデンスベースドな記載に溢れています。苦痛を緩和する際に用いるミダゾラムの用量はどのくらいか、その有効率はどのくらいか、また意思決定に参加している人の割合はどうなっているか・・・。とにかく、膨大な文献を読み込んだデータをもとに議論されています。参考文献も1つ1つにコメントがついています。巧緻で丁寧な仕事です。
サラっと書かれていましたが、「自分たちはどこまでできるのかを言語化する」というのは重要なことですね。特に医療スタッフの間では何度もすり合わせする必要があると思います。