気管支鏡時の出血に対するアドレナリン散布 vs トラネキサム酸散布

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この研究、10年前から「誰かやらないかな」とずっと言ってきたんですが、他力本願なので、誰か論文出すのを待っていました。クロアチアが一番乗りですが、2000例以上をしっかりみている。さすがにこれはCHESTアクセプトとなりました。

ぶっちゃけると、待機による自然止血の作用が一番大きいんじゃないかと思っていてですね。あんまり言うとアレなんで、濁しておきますが・・・。

ちなみにクライオバイオプシーのときは、当院はバルーンカテーテルを使っています。バルーニングしても溢れてくるときは、デフレーションしてアドレナリンを入れて、その後インフレーションする、みたいなこともやっています。

アドレナリンシリンジは、蒸留水1mLに対して1mgのアドレナリンが溶解されています。そのため、1A(1000倍アドレナリン)を生食100mLに希釈すると、10万倍アドレナリンになります。この研究で用いられているアドレナリンは1万倍希釈です。これはすなわち、生食10mLに溶解して2mLフラッシュです。

日本で慣例的に用いられているアドレナリン散布はもしかすると希釈しすぎなのでは、と実は思っています。


Badovinac S, et al. Tranexamic acid versus adrenaline for controlling iatrogenic bleeding during flexible bronchoscopy (TAVA): a double blind, randomized control trial. Chest. 2022 Oct 20;S0012-3692(22)04004-1.

  • 概要
■気管支鏡検査のときに用いらる局所止血剤は、冷生理食塩水やアドレナリンである。トラネキサム酸(TXA)のような他剤をみたデータは限られている。アドレナリンと比較をおこなった。

■三次医療機関において、クラスターランダム化二重盲検単施設研究を実施した。冷生理食塩水(4℃、5ml)3回投与後の止血失敗時に、TXA(100mg、2ml)またはアドレナリン(0.2mg、2ml、1:10000)を最大3回投与する群に患者を割り付けた。他介入を行う前に、クロスオーバーが許可された(さらに3回まで適用)。出血の重症度は、気管支鏡医がVASを用いて評価した(1点:軽度~10点:重度)。

■合計2033例に気管支鏡検査が行われ、130例がアドレナリン(N=65)またはTXA(N=65)に無作為に割り付けられたが、12例がプロトコル違反のために除外となった(アドレナリン群から2例、TXA群から10例)。出血は両群とも83.1%(54/65例)で停止した(p=1.0)。出血の重症度と出血抑制に必要な散布回数は両群で同等であった(アドレナリン平均VAS=4.9±1.3,散布回数=1.8±0.8;TXA平均VAS=5.3±1.4,散布回数=1.8±0.8)。アドレナリン,TXAともに出血のコントロールは、重度出血(40%,58.3%)より中等度出血(86.7%,88.7%)のほうが成功率が高く(それぞれp=0.008,p=0.012)、出血のコントロールのための散布回数は、中等度出血(1.7±0.8,1.7±0.8)より重度出血(3.0±0,2.4±0.5)のほうが多かった(それぞれp=0.006,p=0.002)。両群とも薬物関連有害事象はなかった。







by otowelt | 2022-10-30 00:32 | 気管支鏡

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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