結核の2年以内の再発は、再感染が約3割(中国江蘇省)
2022年 12月 19日
肺結核は、治療後2年までは保健所の協力のもと観察をおこないます。当院では、治療が終了してから、半年後、1年後、1年半後、2年後の4回受診することが多いです。2年間の再発率7.4%というのは、中国とはいえなかなかシビアですね。
北京の報告では、再感染はまれで、8.8%とされています(Front Microbiol . 2021 Dec 8;12:754352.)。反面、カナリア諸島での研究では再発55%・再感染44%(Am J Respir Crit Care Med . 2001 Mar;163(3 Pt 1):717-20.)、ロンドンの研究では再発27.4%・再感染72.6%(PLoS One. 2019; 14(2): e0211972.)と地域によって乖離がかなりあります(手法・対象などさまざまな違いもあり)。
さて、今回の江蘇省の報告は、再発・再感染の割合が7:3くらいという、これまでの間に着地したような報告です。
当たり前ですが、リファンピシンがないと、再発しやすいです。Toman’s tuberculosisにもそういう表がしっかりあります。しかし、世の中治療レジメン短縮化の流れ。ACTG, Study 31/A5349では、4ヶ月ですから。個々にとって諸刃の剣になるとしても、世界の結核死亡者数が減ればそれでヨシとするのか、私なんぞには分からないところです。
Li Q, et al. Tuberculosis reinfection and relapse in eastern China: a prospective study using whole-genome sequencing. Clin Microbiol Infect. 2022 Nov;28(11):1458-1464.
- 概要
■結核の治療が成功した後の再発は、再感染と再発のいずれによっても起こりうる。中国東部における人口ベースのサンプルと全ゲノムシークエンスにおいて、結核再発のリスク因子を評価し、再感染または再発のいずれかによる再発かを調べた。
■2013年から2015年に江蘇省の5都市から喀痰培養陽性の治療成功肺結核患者を登録し、結核再発について2年間追跡調査した。2回目の結核を発症した患者のうち、全ゲノムシークエンスを行い、6SNPを閾値として再発または再感染を区別した。再発の危険因子と疫学的特徴を分析した。
■治療が成功した結核患者1897人のうち,7.4%(141例/1879例)が結核が再発した。非再発性結核と比較して、高齢者(調整オッズ比、1年ごとに1.02,95%信頼区間1.01~1.03,p=0.003)、結核治療歴(調整オッズ比2.22,95%信頼区間1.52~3.26,p<0.001)、両側空洞(調整オッズ比1.56,95%信頼区間1.05~2.32,p=0.029)では再発リスクが高いことが示された。全ゲノムシークエンスができた再発結核患者の27.0%(38例/141例)において、再発のほうが再感染よりかなり多かった(71.1% vs 28.9%,p = 0.014)。
■2013年から2015年に江蘇省の5都市から喀痰培養陽性の治療成功肺結核患者を登録し、結核再発について2年間追跡調査した。2回目の結核を発症した患者のうち、全ゲノムシークエンスを行い、6SNPを閾値として再発または再感染を区別した。再発の危険因子と疫学的特徴を分析した。
■治療が成功した結核患者1897人のうち,7.4%(141例/1879例)が結核が再発した。非再発性結核と比較して、高齢者(調整オッズ比、1年ごとに1.02,95%信頼区間1.01~1.03,p=0.003)、結核治療歴(調整オッズ比2.22,95%信頼区間1.52~3.26,p<0.001)、両側空洞(調整オッズ比1.56,95%信頼区間1.05~2.32,p=0.029)では再発リスクが高いことが示された。全ゲノムシークエンスができた再発結核患者の27.0%(38例/141例)において、再発のほうが再感染よりかなり多かった(71.1% vs 28.9%,p = 0.014)。
by otowelt
| 2022-12-19 00:08
| 抗酸菌感染症