肺MAC症における治療中の抗GPL-IgA抗体価変化

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肺MAC症における抗GPL-IgA抗体価の動きについての報告です。感度・特異度をみるにはちょっと症例数が少ないですが、抗体価はしっかりと動いていますね。信頼区間の幅が広く、統計学的には有意差がついていません。

感度の観点から、陰性イコール肺MAC症ではないという使い方は適切ではないというDiscussionには、同意です。

日本では刀根山病院からの報告がさかんで、経過中の最大抗体価が予後と直結すること(Microbiol Spectr. 2022 Jun 29;10(3):e0053022.)、治療成功例では経時的にMAC抗体価が減少すること(Respir Med. 2021 Oct;187:106585.)が示されています。




  • 概要
■肺MAC症の診断とモニタリングのために、迅速・正確・非侵襲的な検査法についてはアンメットニーズの状況にある。われわれは、アメリカの肺MAC症患者コホートにおいて、抗GPL-IgA抗体の診断精度を評価し、血清の連続変化を調べた。

■オレゴン健康科学大学のNTMバイオバンクに登録された、治療を開始した肺MAC症患者と、気管支拡張症の有無を問わないコントロール被験者(9例・9例)の血清試料を登録した。これらの感度・特異度を調べた。また、治療開始後0か月、3か月、6か月、12か月の抗GPL-IgA抗体の平均値の変化を比較した。

■肺MAC症25例とコントロール18例を対象とした。ベースライン時の肺MAC症患者の抗GPL-IgA抗体は平均3.40 ± 6.77 U/mLで、気管支拡張症のないコントロール群の平均値0.14 ± 0.03 U/mLより有意に高値だった(P =0.02)。肺MAC症の診断について、感度・特異度は、それぞれ48%・89%だった(カットオフ値0.7 U/mL)であった。

■抗菌薬治療を開始した肺MAC症の抗GPL-IgA抗体平均値は3か月後に0.3202 U/mL減少(P=0.86)、6か月後に0.8678 U/mL(P =0.47)減少、1 年後に 1.9816 U/mL(P =0.41)減少した。

■肺MAC症患者におけるQOL-気管支拡張症呼吸器症状スケールの改善は、治療12か月後の抗体価低下と相関していた(r = -0.50, P = 0.06)。






by otowelt | 2022-11-11 20:26 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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