PRISmは心血管系イベントリスクを上昇


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PRISmは、「Preserved Ratio Impaired Spirometry(1秒率が保たれている肺機能障害)」の略語で、1秒率がCOPDの基準を満たさないのに1秒量だけが低下している状態のことを指します。具体的には、1秒率≧70%かつ予測1秒量<80%の状態と定義されます。つまり、自身の努力性肺活量と比べた1秒量の割合には問題ないのですが、周囲の健康な人とくらべて1秒量が低い状態ということです。

参考記事呼吸器内科医が知っておきたい概念:PRISm(URL:https://pulmonary.exblog.jp/28617093/

PRISmの中に「偽のPRISm」が隠れている可能性があることは理解できます。こういった人はCVDリスクは高くならないという研究結果が示されています。


Zheng J, et al. Preserved Ratio Impaired Spirometry in Relation to Cardiovascular Outcomes: A Large Prospective Cohort Study. Chest. 2022 Nov 10;S0012-3692(22)04064-8.

  • 概要
■PRISmは、肺機能に障害がありながら1秒率は正常という異質な状態である。PRISmと心血管系(CVD)アウトカムに関する報告は少ない。この研究では、PRISmがその後のCVDイベントにどのように影響するかを調べた。

■UK Biobankコホート研究において、ベースライン(2006~2010年)にスパイロメトリー(FEV1およびFVC)データを有する心血管疾患のない被験者を対象とした。ベースラインのスパイロメトリーとフォローアップのスパイロメトリー(2014~2020年)を行った参加者を追跡比較の解析対象とした。Cox比例ハザード多変量回帰を行い、主要有害心血管イベント(MACE)、心筋梗塞発症、脳卒中、心不全(HF)、CVD死亡のアウトカムを評価した。

■ベースライン解析(32万9,954人)では、PRISmを有する参加者の多変量調整ハザード比(対正常スパイロメトリー)は、MACE1.26(95%信頼区間1.17-1.35)、心筋梗塞1.12(95%信頼区間1.01-1.25)、HF1.88(95%信頼区間1.72-2.05)、脳卒中1.26(95%信頼区間1.13-1.40)、CVD死亡1.55(95%信頼区間1.37-1.76)であった。22,781人の参加者は、平均8.9年後にフォローアップのスパイロメトリーを受けた。この解析では、持続的PRISm(ハザード比1.96; 95%信頼区間1.24-3.09)および気流閉塞(ハザード比1.43; 95%信頼区間1.00-2.04)は、肺機能が常に正常である場合と比べてMACE発生率の高さと関連していることが示された。持続的なPRISmと比較して、PRISmから正常への移行は、MACE発生率の低下と関連した(ハザード比0.42; 95%信頼区間0.19-0.99)。






by otowelt | 2022-11-16 00:26 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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