喀血に対するトラネキサム酸静注 vs トラネキサム酸ネブライザー吸入
2022年 11月 28日
トラネキサム酸のネブライザー吸入は、生理食塩水のネブライザー吸入よりも止血効果が高いとランダム化比較試験で過去に示されています(Chest. 2018 Dec;154(6):1379-1384.)。2018年のこの試験では、入院してから5日以内の喀血軽快はトラネキサム酸吸入群の方がプラセボ吸入群より有意に多かったとされています(96% vs 50%、P<0.0005)。
静注トラネキサム酸も効果的であることがDPCデータベースに基づく研究から示されています(Crit Care. 2019 Nov 6;23(1):347.)。
さて、頂上決戦。トラネキサム酸のネブライザー吸入とトラネキサム酸の静注のランダム化比較試験です。圧倒的にネブライザー吸入の勝利と言えますね。日本の場合、調剤に難があり、専用のネブライザー製剤が無いと実現難しいかなと思います。
■トラネキサム酸(TA)は喀血患者の出血の抑制に使用される。しかし、TA の投与経路の違いによる有効性は検討されていない。喀血で救急外来を受診した患者において、TAのネブライザーと静脈内投与経路に喀血量を減少させる有効性において差があるかどうか調べた。
■活動性の喀血で救急外来を受診した成人患者を対象に、ネブライザーを用いたTA(500mg/日)投与と静脈内投与(500mg/日)のオープンラベルクラスターランダム化単施設パイロット研究を実施した。主要評価項目は、30分後の止血であった。副次的評価項目は、6時間後、12時間後、24時間後の喀血量、インターベンションの実施、TAの副作用とした。血行動態が不安定な患者、直ちにインターベンションや人工呼吸を必要とする患者は対象から除外した。
■主要評価項目であるトラネキサム酸投与30分後の止血率は、ネブライザー群40例(72.7%)、静注群28例(50.9%)とネブライザー群のほうが有意に高いという結果だった(p=0.0019)。また、喀血量はいずれの観察期間においてもネブライザー群で有意に減少していることが示された(30分:P=0.011、6時間P=0.002, 12時間P=0.0008, 24時間P=0.005 )。
■気管支動脈塞栓術を必要とした患者は、ネブライザー群で少なく(13例 vs 21例,P=0.024)、救急部からの退院率も高かった(67.92% vs 39.02%,P=0.005)。
■ネブライザー投与群で2例の患者に無症候性気管支攣縮が認められたが、短時間作用性β刺激薬のネブライザー投与により消失した。72時間の追跡期間中、救急外来を退院した患者のうち、インターベンション治療を受けた患者、再出血で救急外来を受診した患者はいなかった。
by otowelt
| 2022-11-28 00:46
| 呼吸器その他