メタアナリシス:COPDに対するICSは死亡リスクを低下させるか


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COPDに対するICSについては2006年のメタアナリシスですでに死亡に対する有益性が示されています(Chest. 2006 Sep;130(3):640-6.)。好酸球性フェノタイプを有するCOPDに対してはICSを加えるのが有効ですね。喘息もそうですが、症状が強ければ最初からトリプル吸入療法でもよいのではないかと考えています。

オッズ比にすると数値上は確かに効果的なのですが、NNTはかなり高い数値になりますので、臨床で実感できるものではないと思われます。



Chen H, et al. Association of Inhaled Corticosteroids With All-Cause Mortality Risk in Patients With COPD: A Meta-analysis of 60 Randomized Controlled Trials. Chest. 2023 Jan;163(1):100-114.

  • 概要
■ICSは、COPDの維持療法に広く使用されている。しかし、ICSを含む吸入療法が全死亡リスクを低下させることができるかどうか、また、その効果が期待できる患者サブグループについては不明である。ICSを含む吸入療法は、ICSを含まない他の吸入療法と比較して、COPD患者の全死亡リスクを低減させるかどうか調べた。

■PubMed、Cochrane Library、Embase、ClinicalTrials.govを検索し、関連するランダム化臨床試験(RCT)を探した。プール結果は、Petoオッズ比とそれに対応する95%信頼区間を用いて算出した。

■10万3,034人の患者が登録された60のRCTが解析された。ICSを含む吸入療法(Petoオッズ比0.90; 95%信頼区間0.84-0.97)、特に3剤併用療法(Petoオッズ比0.73; 95%信頼区間0.59-0.91) は、ICSを含まない吸入療法と比較して、COPD患者の全死亡リスクの減少に関連していた。

■サブグループ解析の結果、治療期間6か月以上(Petoオッズ比0.90、95%信頼区間0.83-0.97)、中用量ICS(Petoオッズ比0.71、95%信頼区間0.56-0.91)、低用量ICS(Petoオッズ比0.88、95%信頼区間0.79-0.97)、ブデソニド(Petoオッズ比0.75、95%信頼区間0.59-0.94)は有意に関連することが分かった。

■予測因子としては、末梢血好酸球数200/μL以上または比率2%以上、前年度に中等度・重度の増悪を2回以上経験、GOLD stage IIIまたはIV、65歳未満、BMI≧25が同定された。特に末梢血好酸球数200/μL以上(Petoオッズ比0.58; 95%信頼区間0.36-0.95)が強力な予測因子であった。





by otowelt | 2023-02-06 00:31 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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