Mycobacterium abscessusに対するシタフロキサシンと他剤のシナジー効果について
2023年 02月 07日
今回紹介する論文とは別ですが、Mycobacterium abscessus71株のコロニーのスムース型とラフ型を比較した観察研究(J Infect Dis . 2023 Jan 13;jiad007.)によると(genotype NTM-DRで亜種同定)、ラフ型は、咳嗽が多く、光学顕微鏡でコード形成が圧倒的に多いことが示されています。
コード形成は結核菌で有名な所見ですが、ミコール酸を主体とした脂質が豊富に存在し、隣接する抗酸菌が密着したまま増殖する現象を見ていると考えられています。
気道に入ったスムース型がラフ型に移行していく過程が顕微鏡的にも示されています。
Watanabe J, et al. The synergetic effect of sitafloxacin-arbekacin combination in the Mycobacterium abscessus species. Sci Rep. 2023 Feb 4;13(1):2027.
- 概要
■Mycobacterium abscessus species(MABS)は、最も多く分離される迅速発育菌(RGM)であり、進行が速く最も抗菌薬耐性の高いRGMの一つであるため,その治療は未だ困難をきわめる。今回われわれは、MABSのラフ型を標的としたシタフロキサシンと併用療法のシナジーについて検討した(FIC:fractional inhibitory concentration)。
■2011年から2020年にかけて、順天堂大学医学部附属病院でさまざまな臨床検体から34株のMABSが分離された。MABSは16S rRNA, rpoB, hsp65, erm遺伝子の配列から確認した。
■シタフロキサシンと抗菌薬の併用における感受性を、抗菌薬単独の場合と比較した。MABS34株中、シタフロキサシン-アミカシン併用で8株、シタフロキサシン―イミペネム併用で9株、シタフロキサシン―アルベカシン併用で19株、シタフロキサシン―クラリスロマイシン併用で9株がそれぞれ相乗的なシナジー効果を示した。
(subspecies abscessusにおけるFIC:文献より引用)
■Mycobacterium abscessus subspecies massiliense(Mma)22株中10株,Mycobacterium abscessus subspecies abscessus(Mab)の11株中8株に対してシタフロキサシン―アルベカシン併用が相乗的な効果を示した。MABSのラフ型では、シタフロキサシン―アルベカシンの併用がより高いシナジーを示した(p=0.008)。
■年齢,性別,喫煙歴,気管支拡張症病変,抗菌薬治療歴などの臨床パラメータは,シナジー効果に影響を与えなかった。
■MABSに対するシタフロキサシン―アルベカシン併用療法の相乗的なシナジー効果が示され、特にラフ型に対して有効である可能性が示唆される。
by otowelt
| 2023-02-07 09:08
| 抗酸菌感染症