非結核性抗酸菌症と気管支拡張症の疫学的特徴(1970年~2015年)
2023年 02月 25日
人口動態統計データなどを活用し、気管支拡張症とNTM症の死亡の関連を論じた、複十字病院の森本先生らの論文です。古典的な感染後気管支拡張症は全体的に減っていますが、感染後気管支拡張症の根本的な原因として、やはりNTMが重要だということが示されています。Discussionにも書かれていますが、女性のNTM症と気管支拡張症は、個別疾患ごとだけでなく相互に評価・解析・議論することが重要なのでしょうね。気管支拡張症の論文数は、ブレンソカチブが使用されることになると、増えてくるかもしれませんね。
結論としては、やはりこの領域、インスメッド合同会社の時代がやってくるのか・・・。まあ、そういう先手を打っている会社なので、先見の明はあると思います。
Morimoto K, et al. Epidemiological characteristics of nontuberculous mycobacteriosis and bronchiectasis: comparative study using national mortality statistics from 1970 to 2015 in Japan. ERJ Open Res. 2023 Feb 20;9(1):00424-2022.
- 概要
■NTM症と気管支拡張症による死亡率および両疾患の関連について全国の縦断的データを評価した。
■1970年から2015年までの日本の全国死亡統計を分析。ICDコードを用いて関連データを抽出した。粗死亡率、年齢調整死亡率、標準化死亡率は、人口動態統計データを使用して算出した。また、NTM症と気管支拡張症に関連する国内の論文を検索・確認した。
■NTM症による死亡者数は1970年から2015年にかけて顕著に増加した。また、この勾配は1995年以降加速した。一方、気管支拡張症による死亡者数は、1994年まではやや減少し、その後プラトーとなったものの、ほぼ横ばいを維持していた(1970年1076人、2015年1021人)。NTM症関連死亡者数は、2006年に気管支拡張症関連死亡者数を上回った。NTM症の死亡は、1990年代には女性優位となり、2015年には性差が最大となった(男性:480,女性:917)。
■1970年から2015年までの日本の全国死亡統計を分析。ICDコードを用いて関連データを抽出した。粗死亡率、年齢調整死亡率、標準化死亡率は、人口動態統計データを使用して算出した。また、NTM症と気管支拡張症に関連する国内の論文を検索・確認した。
■NTM症による死亡者数は1970年から2015年にかけて顕著に増加した。また、この勾配は1995年以降加速した。一方、気管支拡張症による死亡者数は、1994年まではやや減少し、その後プラトーとなったものの、ほぼ横ばいを維持していた(1970年1076人、2015年1021人)。NTM症関連死亡者数は、2006年に気管支拡張症関連死亡者数を上回った。NTM症の死亡は、1990年代には女性優位となり、2015年には性差が最大となった(男性:480,女性:917)。
■気管支拡張症の関連死亡者数は、男性では663人から304人に減少し、傾向は1995年以前と以後で同様だった。女性では、調査期間中に413人から717人に増加し、1990年代に増加が加速した。女性の気管支拡張症関連死亡者数は、女性のNTM症による死亡者数が顕著に増加し始めた1990年代半ばに男性を上回った。
■NTM症と気管支拡張症による死亡率は年齢とともに上昇し、2015年には85歳以上の集団で最多となった。NTM症の死亡率は気管支拡張症による死亡率よりわずかに高かった。年齢別の死亡率を1975年と2015年で比較したところ、過去40年間にわたり一貫して高齢者層の死亡率が相対的に高かったが、NTM症、気管支拡張症ともに男性優位から女性優位に変化していた。
■気管支拡張症による年齢調整死亡率は男女とも減少したが、女性では2010年以降プラトーとなった(2010年は人口10万人あたり0.67、2015年は人口10万人あたり0.68)。NTM症による年齢調整死亡率は、女性では一貫して増加していた。2010年には男女ともNTM症による死亡率が気管支拡張症による死亡率を上回った(男性:人口10万人あたり0.45人、女性:人口10万人あたり0.85人[2015年])。
■気管支拡張症に関する研究の報告数は、1986年から1990年にかけて1つ目のピークを迎えたが(n=485)(おそらくDPB関連)、その後論文数は減少した。しかし、1996年から2000年以降は増加が見られ、2011年から2015年にかけて2つ目のピークが訪れた(n=568)。NTM症に関する論文数は一貫して増加し、特に1991年から1995年(n=352)、2011年から2015年(n=3009)の期間以降に増加している。
■NTM症と気管支拡張症は関連しており、特に1990年代半ば以降、高齢女性で顕著に増加している。本邦において、気管支拡張症既往のない肺NTM症が感染後気管支拡張症の主要因となっている可能性が示唆される。
by otowelt
| 2023-02-25 17:59
| 呼吸器その他