特発性間質性肺炎の急性増悪を予測する HAL スコア

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おなじみ、浜松医科大学からです。バリデーションコホートまでしっかりと。そろそろ春なので、この時期にアクセプトされるようにHALスコアの論文を書いたのか、いや、さすがにそれは邪推しすぎか・・・。

紹介は割愛していますが、途中IPFと非IPFに分けて解析したあたりから、かなり面白かったです。Kaplan-Meier曲線もきれいに3つに分かれていて、複雑怪奇なスコアリングに行きついてしまう論文が、逆に闇に見えてきました。

いやあ、素晴らしいですね。



Karayama M, et al. A predictive model for acute exacerbation of idiopathic interstitial pneumonias. Eur Respir J. 2023 Feb 23;2201634.

  • 概要
■特発性間質性肺炎急性増悪(AE-IIPs)は、永久的な肺機能障害を引き起こし、致死的となる可能性がある。予測不可能な発生は、IIPsの管理における重要な臨床的問題である。多施設共同後ろ向き観察研究において、IIPs患者を対象に、多変量Fine-Gray解析に基づく臨床因子を用いてAE-IIPsの予測スコアを作成した。

■2001年1月から2020年12月の間に登録施設でIIPsと診断された連続患者の診療記録を後ろ向きに分析した。IIPsの診断は、ATS/ERSガイドラインに従い、治療歴のない患者のみを対象とした。膠原病、サルコイドーシス、過敏性肺炎など既知の原因がある二次性ILDは除外された。また初診時から急性増悪があった患者も除外された。聖隷浜松病院+聖隷三方原病院の患者を探索コホートとし、浜松医科大学病院の患者を検証コホートとした。

■両コホートは主に男性で構成され、半数以上の患者が70歳以上であり、約30%の患者が喫煙歴を持っていた。%FVCが80%未満の患者は探索コホートと検証コホートで、それぞれ42.9%と52.7%であった。IPFはそれぞれ34.9%、36.6%、分類不能型IIPsはそれぞれ49.1%、44.0%だった。

■IIPs患者487例の探索的コホートにおける多変量Fine-Gray解析に基づき、AE-IIPsの予測スコアは以下のように決定された(合計3点)。

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. HALスコア(文献より引用)

■HALスコアは、AE-IIPsのリスクをHarrellのC-index 0.62(95%信頼区間0.56-0.67)で鑑別した。この鑑別能は、IIPs患者402例の検証コホートでも検証され、同値0.67(95%信頼区間0.60-0.73)で鑑別した。混合コホートにおいて、1年、2年、3年、5年、10年におけるAE-IIPsの推定累積リスクは、0点群で1.9%、3.5%、5.1%、7.7%、12.9%、1点群で4.7%、8.3%、12.0%、17.7%、28.4%、2点以上群で8.0%、14.2%、19.7%、28.7%、43.0%となった。

■サブグループ解析の結果、HALスコアはIPFの有無にかかわらず適用可能であった。






by otowelt | 2023-03-01 01:50 | びまん性肺疾患

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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