肺MAC症は18か月以上治療したほうがよい?
2023年 03月 06日
排菌陰性化から12か月というのが1つの目安ですが、国内では15か月のほうがよいというデータも示されています。培養陰性化までそれなりの時間を要することがあるため、基本的には1.5年~2年という治療期間になることが一般的です。再発例の場合、さらに長く設定することがあります。
今回の研究に基づくと、もう1つの治療期間の目安として「治療開始18か月以上」が推奨されることになるかもしれません。(培養陰性化から12か月以上は、おおむねそのくらいになるのですが)。
治療を受けた患者と未治療の患者のベースライン特性に差があるとなかなか評価が難しいことから、この研究では時間を共変数として(time-varying Cox比例ハザードモデル)、治療延長が死亡リスクの高低と関連するかどうかを評価しています。この解析の利点は、死亡アウトカムが発生しえない期間、すなわちインモータルバイアスがなくなることです。反面、リミテーションは、推奨される治療期間を決定する要因である培養陰性化のアウトカムが収集されていない点です。
さらに、研究で示されている重要なポイントとして、塗抹陽性例や空洞例については、watchful waitingではなく治療開始を推奨するということが挙げられるでしょう。
Kim J, et al. Impact of treatment on long-term survival of patients with Mycobacterium avium complex pulmonary disease. Clin Infect Dis. 2023 Mar 1;ciad108.
■肺MAC症治療を受けた486例の患者を解析対象とした。死亡率と治療期間の間に有意な逆相関が観察された(P for trend = 0.007)。18か月以上の治療を受けた患者は、死亡率の低下と有意に関連していた(調整ハザード比0.32、95%信頼区間0.15-0.71)。サブグループ解析では、ベースライン時に空洞性病変(補正ハザード比0.17, 95%信頼区間0.05-0.57)、抗酸菌塗抹陽性(補正ハザード比0.13, 95%信頼区間0.02-0.84) がみられる患者は、治療期間と死亡率の間のこの有意な逆関係を維持していた。
■進行性の肺MAC症、特に抗酸菌負荷が高い空洞や塗抹陽性例の場合では、長期の抗菌薬を検討する必要がある。
- 概要
■抗菌薬治療が肺MAC症の長期生存率を向上させるかどうかは不明である。
■2009年1月1日から2020年12月31日の間に韓国の3次医療センターで肺MAC症治療を受けた18歳以上の患者の生存を分析した。治療期間は4つの時期に分けられた。すなわち、<6か月、6か月~12か月、12か月~18か月、18か月以上の4パターンである。時変多変量Cox比例ハザードモデルを用いて、各時期における全死因死亡リスクを算出した。モデルは、年齢、性別、肥満度、虫歯の有無、赤沈、抗酸菌塗抹陽性、クラリスロマイシン耐性、併存疾患など、死亡率に関連する主要臨床因子で調整した。
■2009年1月1日から2020年12月31日の間に韓国の3次医療センターで肺MAC症治療を受けた18歳以上の患者の生存を分析した。治療期間は4つの時期に分けられた。すなわち、<6か月、6か月~12か月、12か月~18か月、18か月以上の4パターンである。時変多変量Cox比例ハザードモデルを用いて、各時期における全死因死亡リスクを算出した。モデルは、年齢、性別、肥満度、虫歯の有無、赤沈、抗酸菌塗抹陽性、クラリスロマイシン耐性、併存疾患など、死亡率に関連する主要臨床因子で調整した。
■肺MAC症治療を受けた486例の患者を解析対象とした。死亡率と治療期間の間に有意な逆相関が観察された(P for trend = 0.007)。18か月以上の治療を受けた患者は、死亡率の低下と有意に関連していた(調整ハザード比0.32、95%信頼区間0.15-0.71)。サブグループ解析では、ベースライン時に空洞性病変(補正ハザード比0.17, 95%信頼区間0.05-0.57)、抗酸菌塗抹陽性(補正ハザード比0.13, 95%信頼区間0.02-0.84) がみられる患者は、治療期間と死亡率の間のこの有意な逆関係を維持していた。
■進行性の肺MAC症、特に抗酸菌負荷が高い空洞や塗抹陽性例の場合では、長期の抗菌薬を検討する必要がある。
by otowelt
| 2023-03-06 23:13
| 抗酸菌感染症