増悪歴のあるCOPDに対するMART療法


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Thoraxにしては珍しい研究が掲載されました。

日本ではいまだにSMART療法と呼ばれていますが、海外ではもうMART療法という用語に変わっているので、閉塞性肺疾患を診療される先生は「MART」を定着させたほうがよいでしょう。

今回の研究では、中等度~重度のCOPD患者において、より少ない1日ICS投与量でフルチカゾン/サルメテロールと同様の効果が得られるとしています。増悪を繰り返す症例についてはMARTのほうがよいというエビデンスになります。





  • 概要
■ICS/ホルモテロールによるMARTは、喘息の増悪を抑制する。COPDにおいて、フルチカゾン/サルメテロールと比較することを目的とした。

■過去2年間に1回以上の増悪があったCOPD患者を、1年間、非盲検MART療法(ブデソニド/ホルモテロール[スパイロマックス] 160/4.5μg 2吸入1日2回+必要時1吸入)、固定用量療法(フルチカゾンプロピオン酸エステル/サルメテロール[ディスカス] 500/50μg 1吸入1日2吸入+必要時サルブタモール2吸入)にランダムに割り付けた。主要評価項目は、中等度/重度の増悪率とし、プレドニゾロン・抗菌薬の経口投与によって定義された。

■195例のCOPD患者がランダムに割り付けられた(MART群130例、固定用量群92例)。MART療法群と固定用量群の間に増悪率の有意差はなかった(それぞれ1.32 vs 1.32 /年、率比1.05 [95%信頼区間0.79 to 1.39];p=0.741)。肺機能パラメータや健康ステータスに差はなかった。ICSの総投与量は、固定用量群よりもMART療法群の方が有意に少なかった(ブデソニド換算でそれぞれ928μg/日 vs 1747μg/日、p<0.05)。同様の割合の患者が有害事象を報告した(MART療法群73%、固定用量群68%、p=0.408)。肺炎は、MART療法群5% 、固定用量群1%だった(p=0.216)。





by otowelt | 2023-05-08 00:24 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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