閉塞性睡眠時無呼吸と癌の関連


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以下のことが示されました。

・夜間低酸素血症は、がん有病率と独立して関連
・OSAの重症度はがん罹患率と関連するが、独立していない

夜間低酸素血症ってCOPDの世界ではそこまで気にしなくてよいという誤解がありますが、低酸素に至る状況というのは、そりゃあないほうがよいのは事実です。




Marriott RJ, et al. Does obstructive sleep apnea increase risk for cancer? A large historical sleep clinic cohort study. Chest. 2023 May 5;S0012-3692(23)00644-X.

  • 概要
■閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と癌との関係は不明である。西オーストラリアの大規模な睡眠クリニックコホート(N=20,289)において、OSAと癌の有病率および発生率との間にどのような関連があるのかを調べる。

■OSAの重症度は、AHIおよびPSG下夜間低酸素血症(酸素飽和度<90%の持続時間と割合)によって定義された。潜在的な交絡因子として、年齢、性別、BMI、喫煙、社会経済的ステータス、血圧が挙げられた。解析は、AHIスコアリング基準を用いて期間内基準で判断された: 1989年1月1日~2002年7月31日(American Sleep Disorders Association [ASDA])、2002年8月1日~2013年6月30日(Chicago criteria)。AHIおよび夜間低酸素血症と癌有病率との関連をロジスティック回帰で、癌罹患率との関連をCox回帰分析で検討した。

■ベースライン時の癌有病率は、ASDA期では10,561人中329人、Chicago criteria期では9,728人中633人だった。参加者の年齢、性別、BMI、喫煙、SES、血圧で調整すると、AHIではなく夜間低酸素血症が癌の有病と独立して関連していた。

■ベースラインで癌有病のなかった集団において、癌は中央値11.2年のフォローアップ期間中に10,232人(ASDA)中1950人、9095人(Chicago)中623人で診断された。基準カテゴリー(OSAなし:AHI<5/h)と比較して、単変量モデルでは、軽度(AHI 5-15/h)、中度(AHI 15.1-30/h)、重度のOSA(AHI>30/h)の癌罹患のハザード比が高くなると推定された。交絡因子を調整した後、多変量モデルは、OSA重症度と癌罹患率の上昇との間に独立した関連はないことが示された。





by otowelt | 2023-06-21 00:47 | 呼吸器その他

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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