肺NTM症の診断に胃液は有用

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テイルズ・オブ・マイコバクテリア、下田先生の論文です。

下田先生についてはこちらの論文もどうぞ。

・参考:肺結核の診断は「3連痰」を検査するより、どこかに胃液検査を入れよう(URL:https://pulmonary.exblog.jp/29938823/

基本的に肺NTM症に対する胃液検査も有用と言えます。


Shimoda M, et al. Usefulness of gastric aspirates for diagnosing nontuberculous mycobacteriosis. Sci Rep. 2023 May 15;13(1):7858

■肺非結核性抗酸菌症(NTM-PD)と肺結核(TB)の鑑別は困難である。われわれは、NTM-PD・TBの診断・鑑別のための胃液検査の有用性を評価した。

■複十字病院において、喀痰塗抹陰性または喀痰喀出困難の患者491名のデータを後ろ向きに収集した。NTM-PD患者31例を他疾患患者410例と比較した(図、比較は3パターン)。

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. 本研究のフローチャート(文献より引用)

■comparison 1:31例のNTM-PDと、その他の疾患421例(肺結核203例を含む)を比較したところ、NTM-PD診断における胃液検査は塗抹陽性に対する感度38.7%、特異度88.8%、オッズ比5.00(95%信頼区間2.07-11.7)、培養の陽性に対する感度74.2%、特異度99.0%、オッズ比276.5(95%信頼区間74.6-1356.5)だった。

■comparison 2:NB型と空洞型の間に有意差はなかった(塗抹 n = 10 [37.0%] vs. n = 2 [50.0%], p = 0.630;培養 n = 19 [70.4%] vs. n = 4 [100.0%], p = 0.550)。

■comparison 3:81例のNTM-PD疑い例(1回でもNTMが培養された症例)と410例のそれ以外の疾患(肺結核203例を含む)を比較したところ、NTM-PD診断における胃液検査は塗抹陽性に対する感度32.1%、特異度88.5%、培養陽性に対する感度64.2%、特異度99.8%だった。胃液でNTMが陽性になった症例のうち肺結核と診断されたのは1例のみだった。

■3回の喀痰培養でNTMの原因菌が特定できなかった23例のうち、78.3%(18例)は胃液培養が陽性で、33.3%(18例中6例)は経過観察中にNTM-PDの診断基準を満たした。






by otowelt | 2023-05-20 00:27 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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