Mycobacterium abscessusに対するオマダサイクリンと他剤のin vitroシナジー効果
2023年 05月 21日
アブセッサス神、藤原先生らの研究です。Mycobacterium abscessusは感染症学会でもかなり注目されつつある菌です。この感染症には、いくつか注目されているテーマがあります。テトラサイクリン、特にオマダサイクリン(Nuzyra)はその1つです。FICでantagonismがゼロというのは大事な知見です。
■参考記事
先月、Johns Hopkins大学からマウス肺におけるオマダサイクリンとの併用薬の検討について報告がありました(mSphere. 2023 Apr 20;8(2):e0066522.)。メロペネムとエルタペネムはin vitroでは厳しいが、ビアペネムは割とよいデータもあるという話を感染症学会のシンポジウムで触れたとき、うっかりフィニバックスと口走ってしまいましたがオメガシンでしたね。
その他のトピックとして、トランスペプチダーゼ阻害の観点から、M. abscessus症でβラクタムの併用はどうかという話があります。ペニシリンとセフトリアキソンの併用がEnterococcus faecalis心内膜炎に有効であるのと同じロジックなのでしょうか(Clin Infect Dis. 2013 May;56(9):1261-8.)。
あとはBlaMabがらみも注目されています。従来のβラクタマーゼ阻害剤は、βラクタムのかわりに特攻隊のように突撃する自爆作用がありますが、DBOは帰りのエンジンを積んで帰って来ることができる側面を持っています。製品化されているものとしては、アビカズ、バボメア、レカルブリオあたりになります。
Fujiwara K, et al. In Vitro Synergistic Effects of Omadacycline with Other Antimicrobial Agents against Mycobacterium abscessus. Antimicrob Agents Chemother. 2023 May 8;e0157922.
- 概要
■肺Mycobacterium abscessus species(MABS)症の臨床的重要性はますます高まっているが、現行ガイドラインで推奨されている標準的な治療レジメンは、転帰不良をもたらす。われわれは、新規テトラサイクリンであるオマダサイクリン(OMC)のMABSに対するin vitro活性を調べ、新規MABS治療オプションとしての可能性を探索した。
■2005年1月から2014年5月までに40例の患者の喀痰から得られたMycobacterium abscessus subsp. abscessus(Mab)臨床株40株の薬剤感受性を検討した。OMC、アミカシン(AMK)、クラリスロマイシン(CLR)、クロファジミン(CLO)、イミペネム(IPM)、リファブチン(RFB)、テジゾリド(TZD)の単剤MIC値とOMCとのシナジーについてチェッカーボード法のFIC indexで検討した。また、Mabのコロニー形態に基づく抗菌薬の効果の差も検討した。
■T28 sequevarが38株(95.0%)、T28C sequevarが2株(5.0%)で、17株はrough型、21株はsmooth型、2株は中間型だった。OMC単独のMIC50およびMIC90は、それぞれ2μg/mL、4μg/mLだった。ほとんどの菌株がAMKに感受性を示した(39株,97.5%)。CLOのMIC値が0.25 mg/mL未満だったのは19株(47.5%)、0.5 mg/mL未満だったのは38株(95.0%)。IPM感受性株は2.5%で、42.5%がIだった。
■組み合わせでは、OMC/AMK17.5%、OMC/CLR75.8%、OMC/CLO25.0%、OMC/IPM21.1%、OMC/RFB76.9%、OMC/TZD34.4%に相乗効果が確認された。OMC/RFB併用時、RFPの最小FICにおけるMIC50・MIC90は、それぞれ8→1 mg/mL、16→4 mg/mLへ減少し、OMCは2 mg/mL→0.25 mg/mL、4 mg/mL→1 mg/mLに減少した.
■rough型コロニーに対して、より効果がみられたのは、OMC/CLO(47.1% vs 9.5%,P = 0.023)、OMC/TZD(60.0% vs 12.5%,P = 0.009)の組み合わせだった(smooth型と比較)。
by otowelt
| 2023-05-21 21:25
| 抗酸菌感染症