中枢神経系結核に対するインフリキシマブ

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ステロイドを使うこと以外に有効な治療法がなかった領域ですが、インフリキシマブについての報告です。インフリキシマブ投与中に粟粒結核を起こして入院した症例を何度か経験していると、本当に大丈夫なのだろうかと思ってしまいますが、ステロイドも生物学的製剤も短期的に用いることは、そうそうリスクにはならないのかもしれません。



Manesh S A, et al. Effectiveness of adjunctive high dose infliximab therapy to improve disability free survival among patients with severe CNS tuberculosis: a matched retrospective cohort study. Clin Infect Dis. 2023 Jul 5;ciad401.

  • 概要
■最適な抗結核薬治療とステロイドの使用にもかかわらず、炎症性病変により悪化した重症中枢神経系結核に対する治療選択肢はほとんど存在しない。これらの患者におけるインフリキシマブの有効性と安全性に関するデータは限られている。

■中枢神経系結核を有する成人の2群を比較した。コホートAでは、2019年3月から2022年7月の間に、最適な抗結核薬およびステロイド投与後にインフリキシマブを少なくとも1回投与された。コホートBでは、抗結核薬とステロイドのみの投与を受けた。6か月後の無障害生存率(mRSスコア≦2)を主要評価項目とした。

■ベースラインのMRCグレードとmRSスコアはコホート間で同様であった。抗結核薬およびステロイド投与開始からインフリキシマブ投与までの期間中央値は6か月(IQR 3.7-13)、抗結核薬およびステロイド投与開始から神経障害出現までの期間中央値は4か月(IQR 2-6.2)であった。インフリキシマブの適応は、症候性脳結核腫(20/30;66.7%)、麻痺を伴う脊髄病変(8/30;26.7%)、視交叉くも膜炎(3/30;10%)であり、十分な抗結核薬とステロイドにもかかわらず悪化した患者を対象としている。

■6か月後の重度障害(5/30;16.7%、21/60;35%)と全死因死亡率(2/30;6.7%、13/60;21.7%)はコホートAで低かった。インフリキシマブへの曝露のみが6か月後の無障害生存と正の関連を示した(aRR 6.2、p=0.001、95%信頼区間2.18-17.83)。インフリキシマブに関連した明らかな副作用は認められなかった。





by otowelt | 2023-07-30 00:31 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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