難治性肺Mycobacterium abscessus症に対する「間欠的多剤併用静注療法」
2023年 09月 06日
肺Mycobacterium abscessus症の治療は、有効な薬剤を投与することに尽きますが、強化期間では点滴治療が必要です。チエナムとアミカシンを毎日点滴することになりますが、諸外国では選択肢はもう少しあって、チエナムの代替としてセフォキシチン、その他チゲサイクリンも使われます。日本のタイガシルは、当然ながら保険適応外となっています。
チエナムとアミカシンは肺MABS症には使用事例について審査上認められており、当院でも4週間ほど入院して点滴治療をおこない、その後アミカシンを外来で継続することが多いです。
肺MABS症の治療の実際については、J-IDEOの特集に書かせていただいているので、是非参照ください。
■参考記事:出版のお知らせ:『J-IDEO』"急増する非結核性抗酸菌(NTM)症にそなえよ"(URL:https://pulmonary.exblog.jp/30363725/)
この研究はケースシリーズ的な原著論文ですが、丁寧なつくりになっています。
- 概要
■難治性肺Mycobacterium abscessus症(MAB-PD)患者のマネジメントに関する報告は乏しく、12か月以上の抗菌薬に効果がみられないMAB-PD患者に対して、入院を繰り返しながら間欠的多剤併用静注療法(IMIT)を実施した。
■アミカシン、イミペネム(セフォキシチン)、チゲサイクリンなどの抗菌薬を静脈内投与し、難治性MAB-PDに対してIMITを施行した36例の転帰を評価した。患者は繰り返し入院(入院期間は2-5週間)し、抗菌薬の経口/吸入を維持しながら、症状の再発またはX線写真による悪化が認められた場合にIMITを実施した。
■36例のうち、26例(72%)がM. abscessus subspecies abscessus(以下、M. abscessus)-PDであり、10例(28%)がM. abscessus subspecies massiliense(以下、M. massiliense)-PDであった。
■アミカシン、イミペネム(セフォキシチン)、チゲサイクリンなどの抗菌薬を静脈内投与し、難治性MAB-PDに対してIMITを施行した36例の転帰を評価した。患者は繰り返し入院(入院期間は2-5週間)し、抗菌薬の経口/吸入を維持しながら、症状の再発またはX線写真による悪化が認められた場合にIMITを実施した。
■36例のうち、26例(72%)がM. abscessus subspecies abscessus(以下、M. abscessus)-PDであり、10例(28%)がM. abscessus subspecies massiliense(以下、M. massiliense)-PDであった。
■IMITによる入院回数の中央値は、M. abscessus-PD患者では2回(IQR1~3)、M. massiliense-PD患者では1回(IQR1~2)であった。
■少なくとも1回の培養陰性、および定義上の培養陰性化は、M. abscessus-PD患者の62%と12%、M. massiliense-PD患者の80%と60%で観察された。
■症状の改善は全例でみられ、空洞の改善や悪化の消失を含むX線における改善は、M. abscessus-PD患者の42%とM. massiliense-PD患者の70%でみられた。クラリスロマイシンやアミカシンに対する耐性は獲得されなかった。リネゾリドの耐性化が5人に観察された。
by otowelt
| 2023-09-06 00:52
| 抗酸菌感染症