結核の予後予測:AHLスコア
2023年 09月 18日
複十字病院からの素晴らしい研究です。丹精込めて、バリデーションまで実施しています。「AHLスコアが〇点で」と当たり前のように使われるとよいですね。AHLスコアのC-indexはかなり高めです。
プロカルシトニン、CRP、アルブミンなどいろいろな予後規定因子があると思いますが、血液検査では今回リンパ球が選ばれています。プロカルシトニンは有意な変数でしたが、CRPとアルブミンは有意差つかずといった感じです。Aと聞くと年齢を思い浮かべそうになりますが、この研究では高齢者層で補正ハザード比が有意に上昇していません。
limitationに「日本国内では軽症例も含めて塗抹陽性例が全員入院する」という点を挙げていますが、重症度にばらつきがある塗抹陽性例をみたリアルワールドだからこそ意義のある研究だと私は思いました。
Ozawa T, et al. AHL score for predicting mortality risk in patients with pulmonary tuberculosis. Chest. 2023; S0012-3692(23)05434-X.
■臨床応用可能な肺結核の死亡リスク予測システムは治療成績を改善する可能性があるが、計算が容易で正確なスコアはまだ報告されていない。われわれは、肺結核患者を対象とした簡便で客観的な重症度スコアを構築するため、単純な客観的因子からなる臨床スコアを用いて、肺結核患者の死亡リスクを予測した。
■開発コホートには、新たに肺結核と診断された患者を募集した当院の過去の前向き研究のデータセットを用いた。検証コホートの患者は、2021年3月から2022年9月の間に前向きに募集した。主要評価項目は全死因院内死亡率とした。開発コホートでは、Cox比例ハザード回帰を用いて死亡リスク予測モデルを最適化した。疾患重症度スコアは、各共変量に積分点を割り当てて作成した。
■開発コホートの252例と検証コホートの165例のデータが解析された。これらの患者でHIVに重複感染している患者はいなかった。
■開発コホート、検証コホートのそれぞれ39例(15.5%)と17例(10.3%)が入院中に死亡した。重症度スコア(AHLスコアと命名)には3つの臨床パラメータが含まれた。すなわち、ADL日常生活活動(部分介護状態:1点、要介護状態:2点)、低酸素血症(1点)、リンパ球(<720/μL、1点)の3つである。このスコアは、開発コホートでは0.902、検証コホートでは0.842のC-indexを示し、良好な識別性を示した。AHLそれぞれのvariance inflation factorは、2.14、1.44、1.77だった。
■AHLスコアを3つのグループ(0点、1-2点、3-4点)に層別化したところ、開発コホートと検証コホートにおいて、それぞれ低死亡リスク(0%と1.3%)、中間リスク(13.5%と8.9%)、高死亡リスク(55.8%と39.3%)に明確な対応を確認した。
by otowelt
| 2023-09-18 14:21
| 抗酸菌感染症