BIGコホート:リファンピシン耐性結核に対するBPaLレジメンのリアルワールドデータ


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日本では年間30例未満となっていますが、耐性結核に対するBPaLレジメンの最新報告です。

リファンピシン耐性結核に対するBPaLレジメン(ベダキリン+プレトマニド+リネゾリド)は、ベダキリンの殺菌作用がHR的に作用しますが、このレジメンのキモはリネゾリドの長期投与による毒性コントロールです。骨髄前駆細胞におけるATP合成阻害による骨髄抑制と、ミトコンドリア機能異常を介した神経障害です(EBioMedicine 2015; 2:1627–33.、mBio 2015; 6:e01741-15.)。後者は、出現すると長引く印象です。

投与4週間後のヘモグロビンが10%以上低下することがリネゾリドによる重度の貧血を予測する上で感度・特異度が高く、この基準をトリガーに1200mgから600mgに減量することで、重度の貧血を60%防ぐことが可能とされていました(Clin Infect Dis. 2022 May 30;74(10):1736-1747.)。しかし、1200mgはさすがに多すぎるんじゃないかというのはどの専門家からも指摘されていたことです。

BIGコホートでは、リネゾリドについて、62%が用量・用法の調整、49%が週3回投与に切り替えられています。リネゾリドの1日投与量を600mgから300mgに減量するという方法も有効と思われますが、BIGコホートでは薬物動態的に600mg週3回を推奨しています。高トラフはリネゾリドクリアランスの遅延を反映しているため、投与間隔を延長することでヒトミトコンドリアのリネゾリド濃度を抑制できるそうです。

今回の研究をふまえると、リネゾリド600mg/日あるいは減量するなら600mg週3回投与、というのが推奨案になるかもしれません。全体の半数が週3回になっているので、体重が少ない日本人ではそれなりの人が週3回というのが理想的かもしれません。一度血液毒性を経験すると非投与になりやすいことから、初回から減量も今後検討されるでしょうが、限られた武器で臨む治療であり失敗が許されないというところが、議論を悩ましくしています。




Haley CA, et al. Implementation of Bedaquiline, Pretomanid, and Linezolid in the United States: Experience Using a Novel All-Oral Treatment Regimen for Treatment of Rifampin-Resistant or Rifampin-Intolerant Tuberculosis Disease. Clin Infect Dis . 2023 Oct 5;77(7):1053-1062.

  • 概要
■リファンピン耐性結核(RRTB)は世界的に重要な位置づけである感染症だが、治療が開始されているのはわずか3分の1であり、治療成績はしばしば不十分である。

■過去のいくつかの臨床試験では、BPaL6か月レジメンで90%の有効性が示されているが、1200mgのリネゾリドを使用すると重大な毒性が発現することが示されている。2019年にFDAが承認した後、一部の臨床家は、血清薬物濃度と臨床モニタリングによって調整された初回600mgのリネゾリド用量を用いてBPaLを適用している。

■2019年10月14日~2022年4月30日の間にBPaLを投与されたアメリカのRRTB患者(RI-TB含む)のデータを、BIGが集計・分析し、ベースライン検査、治療中・追跡期間中の検査データ、心電図、臨床モニタリングなどを行った。リネゾリドの投与と臨床マネジメントは主治医主導で行われ、結果的にほとんど患者は治療薬モニタリングによりリネゾリドの用法用量を調整していた。

■BPaLを開始した70例(年齢中央値37歳:範囲14~83歳)のうち、43人 (61.4%)がMDRTB、10 人(14.3%)がpre-XDRTB、1人(1.4%)がXDRTBだった。

■pDSTで感受性であった2例がRFPベースの治療に変更した。68例(97.1%)がBPaLを完遂した。4例を除く全例(94.3%)がリネゾリド600mg/日でBPaLを開始し、1例は900mg/日、2例は1200mg/日、1例は末梢神経障害のため600mg週3回で開始した。BPaL治療期間中、副作用に関する慎重な臨床データモニタリング、支持療法、専門家によるコンサルテーションを実施した。42例(61.6%)において、TDMの結果・医療従事者の判断に基づいてリネゾリド用量は1日600mgから変更となった。50例(73.5%)が治療を中断することなく終了した。治療を完了した際のリネゾリド用法用量は記事冒頭の表の通り。

■BPaL投与下で、連続的に培養検査を受けた肺結核患者14人のうち、培養転換までの期間の中央値は37日(範囲1〜90日)であった。

■9%に血液毒性、12%に神経毒性がみられた。副作用によってリネゾリド用法・用量の変更が必要だったのは、血液毒性3例(4.4%)、神経毒性4例(5.9%)であった。

■BPaL投与期間の中央値は189日であった。BPaLを完了した68例中55例(80.9%)が6か月以上の経過で再発がなく、36例(52.9%)が12か月以上、19例(27.9%)が24か月以上再発を経験していない。2例(2.9%)はBPaL治療終了後に追跡不能となり、3例(4.4%)が6か月後追跡不能となった。残りの65人のうち、2人(96.9%)を除く全員が生存しているが、2人は結核が再発した。





by otowelt | 2023-10-12 00:32 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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