メタアナリシス:インフルエンザに対するバロキサビルとオセルタミビルの比較

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JICからの報告。ゾフルーザに追い風になるメタアナリシスになりますね。投与後に耐性が出現したことから、バロキサビル単剤療法にまだ懸念が持たれている点が懸念材料です(N Engl J Med. 2018;379(10):913.、Lancet Infect Dis. 2020;20(10):1204. Epub 2020 Jun 8.)。

エビデンスについてまとめておくと、1,000人以上の合併症のない健康な外来インフルエンザ患者をバロキサビル、オセルタミビル、プラセボのいずれかに割り付けたランダム化試験(CAPSTONE-1)では、症状が消失するまでの時間の中央値は、バロキサビル投与群で53.7時間、プラセボ投与群で80.2時間でした(N Engl J Med. 2018;379(10):913.)。症状が消失するまでの時間は、バロキサビルとオセルタミビルで同程度でした。インフルエンザ合併症のリスクが高い1000人以上の外来患者をバロキサビル、オセルタミビル、プラセボのいずれかにランダムに割り付けたその後の試験(CAPSTONE-2)では、バロキサビルとオセルタミビルの有効性は同等(症状消失までの時間中央値はそれぞれ73時間、81時間)であり、プラセボ(症状消失までの時間中央値は102時間)よりも優れていることが示されています(Lancet Infect Dis. 2020;20(10):1204. Epub 2020 Jun 8.)。



Shiraishi C, et al. Comparison of clinical efficacy and safety of baloxavir marboxil versus oseltamivir as the treatment for influenza virus infections: A systematic review and meta-analysis. JIC, https://doi.org/10.1016/j.jiac.2023.10.017

  • 概要
■バロキサビル・マルボキシル(ゾフルーザ)は、入院患者および外来患者におけるインフルエンザウイルス感染症の治療に広く使用されている。以前のメタアナリシスでは、外来患者および臨床症状から感染が疑われる患者のみを対象としていた。しかし、入院患者に対してバロキサビルとオセルタミビル(タミフル)のどちらがより安全で有効であるかについては、依然として議論の余地がある。

■インフルエンザウイルス感染症の入院患者におけるバロキサビルとオセルタミビルの有効性と安全性を検証するために、システマティックレビューとメタアナリシスを行った。

■Scopus、EMBASE、PubMed、Ichushi、CINAHLデータベースから、2023年1月までに発表された論文をレビューした。アウトカムは、インフルエンザウイルス感染症患者における死亡率、入院期間、バロキサビルまたはオセルタミビル関連の有害事象の発生率、罹病期間、ウイルス力価およびウイルスRNA量の変化とした。

■1624人の外来患者を対象とした2件のランダム化比較試験と、874人の入院患者を対象とした2件の後ろ向き研究が登録された。バロキサビルまたはオセルタミビルによる治療を受けた外来患者において死亡例はなかった。

■入院患者では、バロキサビルはオセルタミビルと比較して死亡率を低下させ(p=0.06)、入院期間を有意に短縮した(p=0.01)。

■外来患者においては、バロキサビルはオセルタミビルと比較して、有害事象の発生率が有意に低く(p=0.03)、インフルエンザウイルス力価(p<0.001)およびウイルスRNA量(p<0.001)が減少し、罹病期間が短い傾向にあった(p=0.27)。





by otowelt | 2023-11-01 12:15 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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